享年23歳の京大院生が遺した痛切なる「生きた証」 絶望的な状況、是非を問いかけるむき出しの思考

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移植はうまくいき、8月に退院。週2で大学の講義にも出られるようになったが、10月に白血球数の急落と重度の肺炎で再入院し、再移植が検討される状況になった。翌月に突然正常値に戻って退院。さらにその翌月に免疫不全による感染症で入院すると、白血病の再発が告げられた。

医師でも予想がつかないほどめまぐるしく変わる状況に山口さんは疲弊し、処方された薬をゴミ箱に捨てるなどの自暴自棄に陥る。ブログを更新する気力も失った。そんな精神状態が続いたある日、主治医から肺炎の完治とともに再発したがん細胞が消滅したと告げられる。

2020年2月になっていた。大学は卒業論文が書けずに留年した。安定した出勤ができず、区役所でのバイトも辞めざるをえなかった。中学と高校の陸上部で鍛えた筋肉と体力は大きく落ち込んだ。けれど、再び日常に戻ってこられた。23歳の誕生日も自宅で迎えることができた。

3度目の再発

<6月3日、二度目の移植からちょうど一年。色々あったけれど生き延びた。
(中略)
どれだけ自分が頑張ろうと、素晴らしい医療体制と医療制度がなければ今頃死んでいた。この国の医療は世界に誇れるものだと思う。>
(2020年6月3日」/Twitter)

3度目の再発がわかったのは2020年12月のこと。翌年2月の治療説明で余命宣告を受けたと、Twitterで伝えている。

2021年2月6日のTwitter。両ブログの更新が止まっていた時期だ

再びハプロ移植を受けるなら「成功率は経験的には1割未満」で、緩和ケアを選べば春が終わる頃に穏やかな最期が迎えられるという。

ここで山口さんは前者を選ぶ。3度目の移植は3月末となった。

冒頭で引用した文章は、このとき「ヨシナシゴトの捌け口」にアップしたものだ。1年振りの更新であり、結果的に最後の更新になった。記事の終盤、残された人たちに将来届く手紙を書こうとして手が止まったという下りがある。そこに山口さんの叫びが刻まれている。

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