「対面作業でしか創造性は生まれない」という妄想 出社しないとイノベーションは生まれない?
一方、ズームやスラック、グーグルドキュメントなどのツールにより、アイデアを生み出す作業ならばオンラインでも通常と同じくらい効果的に行われるようになった、と研究者たちは述べている。
カリフォルニア大学アーバイン校コンピューターサイエンス学部のジュディス・オルソン教授は、共同作業に距離が与える影響を30年間にわたって研究してきた。同教授によると、「最近のテクノロジーのおかげで、リモートワークは通常のオフィス環境に着実に近づいている」。
作業中にビデオチャットをオンのままにして、仲間同士が思いついた考えをすぐに共有したり、グーグルドキュメントで同時に作業したりすることで、クリエイティブな作業を効果的に行うことができる。また、会話から生まれたアイデアやメモを書き留めて、ほかの人にも参照して検討もらうようにすることもできる。
社内での作業は、物理的なモノを扱うような一部のイノベーション業務には不可欠であり、新入社員や指南役を探している人など一部の人々にとっては有益なものでもある。しかし、建築家やデザイナーなど一部のクリエイティブな職業の人たちは、新型コロナが流行している間にリモートワークがいかに効果的かに驚かされてきたし、科学者や学術研究者たちはもう長い間遠くにいる仲間たちとともにプロジェクトに取り組んできているのだ。
対面のオフィスでの仕事になじめない人も
対面でのオフィスでの仕事にどうしてもなじめないという人も多いため、一部の研究者や企業の幹部たちは、オフィスにいるようスタッフに強いるのはイノベーションを生む活力を削ぐことになると発言している。
オフィスでの仕事になじみにくい人には、多くの女性、人種的マイノリティ、介護に従事する人や、障害のある人々が含まれる。ほかにも、恥ずかしがり屋の人、オフィスから遠く離れて暮らす必要がある人、生産性の高い時間が通常の労働時間帯を外れている人、またゴルフや飲み会などの集まりに参加しない人などがいる。
たとえば、経済学者のクラウディア・ゴールディンの調査によると、女性たちは母親になるとすぐに賃金と昇進の面で不利な扱いを受け始め、男女間の賃金格差は、業務を行う場所と時間の柔軟性が最も低い仕事で最も大きくなっているという。また、女性は、対面式の会議において、発言が中断されたり、アイデアが正当に評価されなかったり、話し方が断定的だとして不当な扱いを受ける可能性がより高いとのことだ。