「対面作業でしか創造性は生まれない」という妄想 出社しないとイノベーションは生まれない?

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白人ではない従業員は差別に対処している。スラックの研究グループ、フューチャー・フォーラムによる調査では、黒人の会社員は白人の会社員よりもリモートワークを希望することが多い傾向にあった。その理由は、切り替え(さまざまな状況で振る舞いを変えること)の必要性が減り、仕事への帰属意識が高まるからだった。

リモートワークでは、さまざまな経歴を持つ人々がアイデアを沸き立たせられるようになる。オンライン上であるため、対面式の会議での発言が苦手な人は、一層参加しやすいと感じるかもしれない。スラックなどのアプリを使用するブレインストーミング・セッションでは、インターンや別の部署の社員など、会議に招待されなかっただろう人々を含めることで、より多くの観点が浮かび出ることがある。

「誰でもスクリーン上の同じ小さな箱の中にいると、文字通り誰もが平等の席に着くことができる」と、オンラインゲーム制作会社ロブロックスのエンプロイー・エクスペリエンス責任者のバーバラ・メッシングは語る。同社は1週間に2営業日をリモートのままにしており、1年に2カ月、社員がどこでも好きな場所で働けるようにしている。

より幅広い人材の確保が可能に

また、リモートを行う企業はより多様な従業員を雇用することが可能だ。長時間職場にいることができない人や、ほかの地域で暮らしている人などである。「20マイル(約32キロ)以内の距離で採用されるだけであれば、多様性のある扱いを受けないだろう」と、人材コンサルタントのジョン・サリバンは語る。

一部のリモートワークを許可することにはリスクもある。職場にいる社員が一定数いる場合、行っていない社員が罰せられる場合も考えられる。また、ブレインストーミングのアイデアやプロジェクトにおける共同作業は人間関係に根ざした信頼が必要であるため、直接同僚に会ったほうが、創造性が生まれやすいというのは否めない。

こうした中、一部の専門家は職場に対する新たなアイデアを提案している。毎日、あるいは毎週、社員が出向くような本社としての職場ではなく、社員がグループの集まりで時々行くような場所としての職場の構築である。フォードやセールスフォース、ジロウなどの企業はこうした形式を取っており、集まりの場所を増やし、デスクの列を少なくして職場を再構築しようとしている。

「大きな不安の1つは、この取り組みがうまくいかなかった場合、社員にとって二重の現実を作ってしまうことだ。一方は部屋にいて、もう片方はそうではない。一方は政治的行動に走り、もう片方はそうではない、というような」と、ジロウのスポールディングは語る。「人間はつながって協力したいのだと思う。だが、1週間に5日、そうする必要があるだろうか? あるいは、3カ月に1度だったらそうすることができるだろうか」。

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