音楽・美術・体育の「授業がない国」の背景事情 池上彰「コロナが収束したら海外に出てほしい」

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「外の世界に関心を持ち、知ってほしい」と池上彰さんが力を込めて言う理由とは(写真:PeopleImages/iStock)
OECD(経済協力開発機構)などの調査によると、日本から海外に留学した生徒・学生の数は2004年の約8万3000人をピークとして2016年には約5万6000人に減少しています。そして、世界中を襲った新型コロナウイルスの影響で、2020年、2021年と海外へ出ていくことが難しくなり、旅行や研修、留学の機会はますます減っています。
この状況にジャーナリストの池上彰さんは、「日本の若者は世界に目を向けることが少なくなったのではないか」と憂えています。そんな若者たちに「外の世界に関心を持ち、知ってほしい。コロナ禍が収束したら海外に出てほしい」と力を込めて言います。なぜ、若者に外に出てほしいと願うのか、池上さんの新著『なぜ世界を知るべきなのか』を一部抜粋し再構成しその理由を探ります。

学びだすと「無知」を知る

海外に留学すれば、さまざまな出会いがあるでしょうし、いろいろなことに気づき、感じることがあるでしょう。しかし、旅行だけでも多くのことを感じ、知ることができます。

私自身の話をしましょう。NHKを辞めて、真っ先に向かったのはイランでした。2005年頃、イランが核兵器をつくろうとしているのではないか、というのが世界の大問題になっていました。いずれ、イランが大きなニュースになる、イランの様子を見てみようと思い、身銭を切って行ったのです。

帰国後、知人から「そんな危険な国へ、よく行きましたね」と言われました。その人はイランとイラクを混同していたのですね。核兵器の開発は確かに国際的な脅威ですが、イラン国内はテロが起きているわけでもなく、穏やかでした。一方、イラクはフセイン大統領の独裁政権がアメリカに倒されて以来、混乱が続いていたのです。

イランとイラク、名前はよく似ていますが、民族も言語もまったく違います。イランはペルシャ語を話すアーリア人の国、イラクはアラビア語を話すアラブ人の国。私たちは中東とひとくくりに考えがちですが、すべてがアラブ人の国ではありません。

また、世界各地でイスラム過激派のテロが起きているので、「イスラムは怖い」というイメージを持つ人も多いでしょう。でも、中東のどこでも戦争やテロが起きているわけではありません。

中東のホテルに宿泊すると、翌朝の日の出前、モスクから流れるアザーンの響きで目が覚めることがあります。「アザーン」とは、モスクへ礼拝に来たれという呼びかけのこと。静かな朝の街にアザーンが朗々と響くと、ああ、イスラム圏に来たなとしみじみ感じるのです。

イスラム教徒の祈りの場であるモスクには、信者しか入れない場所もありますが、海外からの異教徒を受け入れてくれるところも多いのです。中に入ると、小さな子どもたちが走り回っていたり、大人が昼寝をしていたりと、平和な日常があります。熱心に『コーラン』を声に出している若者もいます。

そんな光景を見ると、本来平和を求める宗教のはずのイスラムが、なぜマイナスのイメージで見られるのか? 中東でずっと争いが絶えないのはなぜなのか? そんな疑問がわいてきます。

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