音楽・美術・体育の「授業がない国」の背景事情 池上彰「コロナが収束したら海外に出てほしい」

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また、アフリカはどこも日本より暑いと思っている人が多いかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

例えば、アフリカのちょうど赤道直下にあるウガンダに行ったことがあります。赤道直下だからものすごく暑いだろうと思ったのですが、ウガンダの中心地は標高が1000m以上あるので、一年中、初夏の軽井沢のような状態で、とても快適です。転勤でウガンダに来て働いている日本人が、「もう蒸し暑い日本に帰りたくない」と言っていました。ちょっと意外な感じがしませんか?

またアフリカの都市というと、建物が少なくてがらんとした田舎を想像するかもしれませんが、そうではありません。ウガンダの首都カンパラは高層ビルも建っている都会で、車が多くていつも交通渋滞しています。

ちなみにウガンダから見て東側のケニアも、首都のナイロビは標高が高くて快適ですし、また南西側のルワンダはウガンダよりさらに標高が高く、冷涼な気候です。

ルワンダといえば今から30年ほど前に内戦があって、戦争をしていた貧しい国のイメージを持つ人がいるかもしれません。しかし、内戦終結後は経済が発展して、今は世界有数のコーヒー産地となっています。また、ルワンダは女性が国会議員に占める割合が61.3%で世界一。日本は166位で先進国の中で最低水準です。視点を変えれば、立場が逆転することもあるのです。

アフリカ=開発途上国のイメージを覆すような話を紹介してきましたが、当然ながら、どの国もウガンダやケニアの都市のような状態ではありません。

アフリカでは、生まれてから1歳になるまで名前をつけないという地域があります。名前をつけると愛着がわくでしょう。その子が死んでしまったら、親にとって深い心の傷になります。名前をつけなければ、無名の子どもで終わらせられる。一歳まで無事に生きてくれたら大丈夫、このあと大きくなれるよね、じゃあ名前をつけようというわけです。そういう悲しい現実もまだアフリカにはあるのです。

私たちは、世界のことをどれだけ知っているでしょう。「あの国は○○だ」という常識を疑ってみることです。それは国だけではありません。何事も自分で見る、聞く、考える、を実践してほしいのです。

音楽・美術・体育のない国がある

次は、あなたが一日の多くの時間を費やす学校の授業に注目してみましょう。音楽や体育などの授業はどこの国でもあると思いますか?

実はイスラム圏に行くと、音楽、美術、体育の授業がない国があるのです。理由はイスラム教の教えにあります。ひとつずつ説明しましょう。

まず、「音楽」です。イスラム教の始祖であるムハンマドの言行録を『ハディース』といいますが、その中に「音楽が聞こえてきた時にムハンマドが両方の耳を指で塞いだ」という記述があります。音楽が嫌いだからではありません。そもそも、音楽のような楽しいことは地上では我慢し、天国に行ってから経験すればいいという考え方なのです。

イスラム教の第一の聖典は『コーラン』で、ムハンマドが神様(アッラー)から伝えられた言葉を、彼の死後にまとめたものです。『ハディース』は第二の聖典といわれます。音楽は禁止とまで強くはありませんが、推奨はできないとされています。

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