音楽・美術・体育の「授業がない国」の背景事情 池上彰「コロナが収束したら海外に出てほしい」

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世界には、いろいろな宗教が存在します。イスラム教のことはよくわからないという人が多いでしょう。イスラム教を理解するためには、同じ「一神教」のユダヤ教・キリスト教と比較することが必要になります。「一神教」とは、この世界をつくったのは唯一絶対の神様であり、それ以外の神様は存在しないと信じる宗教です。

学んでいくと、唯一絶対の神様がこの世界をつくるだけでなく、やがては「世界の終わり」をもたらす存在でもあることがわかります。世界が終わる時に、自分は天国に行けるのか、地獄に落ちるのか。そんな恐れが、信仰する人々の日常を支えているのです。

そういう「一神教」のことを知ると、では、日本の宗教はどうなっているのだろう、という疑問がわいてきます。神社とお寺は何が違うのか? 神道とはどういう宗教なのか? 日本の仏教はどうなっているのだろう。

ほかの世界のことを知ると、結局は自分のことを知りたくなるのです。そうなれば、しめたもの。知識がどんどん広がって、自国の文化への理解も深まります。そして、いつか海外に出たときに、自国の文化を説明できることが、コミュニケーションに役立つことになります。

世界を知るということ

まさに世界は広くて多種多様なのです。そしてそのことを、あなた自身で見て、聞いて、考えることで知ってほしいと願っています。「あなたとは違う視点」に触れることで、あなたの思考の幅が広がり、他人、社会、そしてあなた自身に対する考え方の許容範囲も広がります。ひいては、あなたが生きていくときの人生の選択肢も広がっていくことになります。

これまで述べてきたように、世界を知ることは、とても面白くて、さらに世の中を知りたくなる、勉強したくなることです。世界に興味を持つことは、あなたを大きく成長させてくれるでしょう。

『なぜ世界を知るべきなのか』(小学館Youth Books)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

コロナ禍の中では海外に出るのはなかなか難しい。また、生徒や学生だと自由に海外に行くわけにはいかないでしょう。

しかし、世界のニュースに関心を持ち、新聞やテレビを読んだり見たりするだけでも、それぞれの国を理解したり、日本はどうすればいいのかを考えたりするヒントが詰まっていることに気づくでしょう。

わからないことがあったらチャンスです。知らないことに出合うのが、学びの始まりです。自分で調べてみましょう。今までよりも世界が広がったような気持ちになるはずです。

どんなことに接しても、常識や思い込みにとらわれず、広い視野で物事を考えることを心がけてほしいな、と思います。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶應義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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