中国の半導体受託生産(ファウンドリー)最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は7月4日、研究開発部門のナンバー2を務める呉金剛氏が辞任を申し出たと明らかにした。理由は「一身上の都合」としており、呉氏は今後、SMICのいかなる職務にもつかないという。
呉氏はSMICの創業2年目の2001年に入社し、現任の経営幹部のなかでは職歴が長い。2014年に研究開発部門の副総裁に着任して以来、FinFET(フィンフェット)と呼ばれる3次元構造のトランジスタの先端プロセス技術開発、およびそのプロジェクト・マネジメントを担当してきた。
SMICの内情に詳しい関係者によれば、呉氏の主な功績は回線幅14nm(ナノメートル)のFinFETプロセスと、同28nmのHKMG(高誘電率絶縁膜/金属ゲート電極)プロセスの開発に道筋をつけたことだという。特に14nmプロセスの開発では、SMICの共同CEO(最高経営責任者)で研究開発部門のトップを務める梁孟松氏の有能な右腕として活躍した。
SMICの情報開示によれば、呉氏の辞任が同社の研究開発に大きな影響を与えることはないという。また、呉氏は辞任後12カ月以内に競合他社に転職したり、(SMICでの職務知識を元にした)サービスを競合他社に提供することは許されない。
共同CEOが辞職を申し出た過去も
同社の研究開発部門の上層部で“揉め事”が生じるのは、呉氏の辞任が初めてではない。2020年12月、SMICはファウンドリー世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)で研究開発部門を長年率いた蒋尚義氏を、同社のナンバー2として迎え入れた。だが、これが梁氏の不満を引き起こし、梁氏が董事会(取締役会に相当)に辞任を申し出る騒ぎにまでなった。しかし梁氏は結局、会社の慰留で辞任を撤回した。
それだけではない。梁氏と、董事長(会長に相当)の周子学氏、共同CEOの趙海軍氏の不仲は、社内では公然の秘密だ。とはいえ内情に詳しい関係者によれば、梁氏は先端プロセス技術、蒋氏はチップレット技術(訳注:複数の小さなチップを組み合わせて1つのシステムを構成する手法)、周氏はマーケティングをそれぞれ担当することで、役割分担が成立しているという。そのバランスが崩れることがなければ、経営陣の不仲がSMICの経営に大きく影響することは避けられそうだ。
(財新記者:何書静)
※原文の配信は7月5日
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