《プロに聞く!人事労務Q&A》兼業禁止規定を理由に社員を懲戒解雇できますか?

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前記の裁判例で解雇の正当性は、

○兼業の職務内容のいかんにかかわらず、会社に対して兼業の具体的職務内容を告知してその承諾を求めることなく、無断で二重就業したことは、それ自体が企業秩序を阻害する行為であり、会社に対する雇用契約上の信用関係を破壊する行為と評価されうるものである。

○兼業の職務内容は、会社の就業時間とは重複していないものの、軽労働とはいえ毎日の勤務時間は6時間にわたり、かつ深夜に及ぶものであって、単なる余暇利用のアルバイトの域を越えるものであり、会社への労務の誠実な提供に何らかの支障を来す蓋然性が高いものとみるのが社会一般の通念であり、事前に会社への申告があった場合には当然に会社の承諾を得られるとは限らないものであったことからして、無断二重就業行為は不問に付して然るべきものとは認められない。

○会社が無断二重就業の就業規則違背行為をとらえて懲戒解雇すべきところ通常解雇にした処置は企業秩序維持のためにやむをえないものであって妥当性を欠くものとはいいがたい。

○解雇当時、すでにキャバレーへの勤務を事実上辞やめていたとの事情を考慮しても、解雇が解雇権濫用により無効であるとは認めることができない。
(有斐閣 別冊ジュリストNo.165「労働判例百選」より)

本来、就業時間外は労働者の自由な時間であることから、就業規則で兼業を全面的に禁止し、その規定に違反したからといって、すぐに懲戒解雇事由に該当するとはいえません。

兼業しても、本業の業務に具体的な支障がないことから解雇無効の事案もあります。

制裁処分を行う前にアルバイトの内容、それに伴う勤務に与える影響、企業秩序に与える影響などを調査・検討してから処分決定をしてください。

白石多賀子(しらいし・たかこ)
東京都社会保険労務士会所属。1985年に雇用システム研究所を設立。企業の労務管理、人事制度設計のコンサルティングを行う一方で、社員・パートの雇用管理に関する講演も行っている。東京地方労働審議会臨時委員、仕事と生活の調和推進会議委員。著書に『パート・高齢者・非正社員の処遇のしくみ』(共著)。


(東洋経済HRオンライン編集部)

人事・労務が企業を変える 東洋経済HRオンライン

 

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