基本的に、地域ごとの人口増減は、出生と死亡という自然増減要素に加えて、他からの転入転出という社会増減要素によって成り立っています。
2020年の国勢調査速報値に戻れば、5年前より人口が増えたところは、9都府県あります。内訳は、首都圏一都三県と大阪、愛知、福岡、滋賀、沖縄となります。このうち、沖縄だけが唯一死亡より出生の多い自然増の地域となりますが、圧倒的に人口増加がトップなのは東京です。東京だけでも55万人の増加ですが、一都三県合計では80万人も増えています。これは、全国の減少分をほぼ首都圏が吸収していることになります。
一方で、人口減少の激しい地域ワースト3は、秋田、岩手、青森とすべて東北勢でした。秋田に至っては、2015~2019年の累積死亡率もワースト、同出生率もワーストです。若いソロ世帯の多い「若ソロ地域」は人口が増え、高齢ソロ世帯の多い「老ソロ地域」は人口が減るということです。
「多死社会」突入の日本で人口減は当然
これは当たり前の話で、『日本だけでない「世界的な人口減少」は不可避だ』の記事でも解説したように、もう間もなく日本は年間150万人以上の死亡者が50年間継続する「多死社会」に突入します。出生数の倍以上毎年死亡者が出るわけですから、人口減少するのは当然です。そして、秋田のような老ソロ地域からそれは進行していきます。
東京など大都市だけが人口増加しているのは、転入超過によるものです。コロナ禍で東京への人口集中が止まったという報道もなされていますが、現実東京を含む首都圏集中は変わりません。
人口移動は基本的に若者だけの現象です。進学や就職を機に移動する20代の若者が人口移動の中心で、それ以外の年代の移動は微々たるものです。つまり、日本全体の人口は減少しているのに、首都圏だけが人口増加しているのは、若者の移動によるものです。
それらを端的に表すグラフが以下です。総務省の人口移動報告より、転入超過数を2015~2019年累積したものを年代別の比率にしたもので、東京含む首都圏と秋田とを比較してみました。
一都三県を年代別にみれば、そのほとんどが20代によって占められていることがわかります。特に、東京と神奈川に顕著です。反対に、秋田県は転出超過のほんどが20代を中心とした若者層の転出です。一都三県と秋田とでは見事なくらい鏡のような対称性を描いています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら