人口87万減なのに「世帯227万増」日本を襲う変化 ソロ世帯の年齢分布「東京と秋田」で異なる点

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だからといって、婚姻支援をすれば若者が集まるわけではありません。結婚を増やせば人口が増えるという因果ではなく、若者が多く移動してくる場所だからこそ、その結果として婚姻が多く発生していると見た方がいいでしょう。

しかも、都市の婚姻率が高いといってもあくまで相対的なものであり、日本全体の婚姻数は激減しています。これは、地方では今以上にますます結婚できなくなるということを示唆します。

子育てのしやすい環境をうたって、30代夫婦を呼び込むという政策を行う地方の自治体もあります。そのやり方自体は間違ってはいません。市町村別の人口増加ランキングを見ても、ベスト10には、さいたま市、流山市、川口市など郊外の都市が名を連ねています。

これも、東京で結婚した若いカップルが、妊娠や出産というライフステージの変化にあわせて、埼玉や千葉など土地代の安いエリアに、家を建てたり、転居したりすることによります。しかし、それが奏功するのは、あくまで仕事のある大都市かその周辺であるという前提条件がある場合のみです。

都市への人口集中は必至

繰り返しますが、人口移動のほとんどは若者によるものです。そして、若者の移動は魅力的な雇用を求めてのものであり、結果として集まった若者同士の出会いの場でもあるわけです。いかに結婚支援や子育て支援の充実を単独で図ったところで、それだけでは若者が地方に行く理由にはなりません。

ワーケーションやテレワーク環境の充実化も一助とはなるでしょうが、抜本的な解決にはなりません。言い換えれば、若者が流出する地域とは、産業が衰退しているという結果なのです。海外からの移民とて、充実した条件の雇用のないところには集まりません。世界的に日本の雇用条件はもはや決して高くはないのです。

残念ながら、都市への人口集中、地方の町の人口減少は必至です。地方に限れば、高齢の老ソロ世帯の増加が不可避となります。社人研によると2040年には世帯の4割はソロ世帯になると推計されていますが、このペースでいけばもっと早くに日本はソロ社会を迎えるでしょう。

同じソロ社会化といっても、大都市における若者の未婚ソロ化と地方における高齢者の老ソロ化というふたつの様相を呈します。地域によって課題も対策も異なるソロ社会問題について、いつまでも見て見ぬふりをするのは限界にきているのではないでしょうか。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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