生徒も先生も間違える「がん授業」での問題
「次の質問です。がんになった人の5年後の相対生存率は、次のうちでどれが正しいと思いますか? ①10% ②30% ③60% ④90%」
志賀さんが尋ねると、中学1年生の全31人の手がもっとも多く上がったのは②。だが、正解は③の60%で、正解者は1人だった。
「最新のデータでは、5年後の相対生存率は64%に伸びています」
志賀さんが補足すると、生徒たちからヘェ〜ッという声が上がる。2021年3月中旬、茨城県稲敷市立桜川中学校。志賀さんは任意団体「茨城がん体験談スピーカーバンク(スピーカーバンク)」代表として、当日の授業を担当していた。
続いて先生たちにも質問を向ける。
「がんと診断される患者さんたちの中で、18歳未満の子どもがいる人は年間何人ぐらいいると思いますか?」
志賀さんがそう言って右手を差し出すと、その先にいた男性教員が自信なさげに「1000人程度?」と回答。すかさず「毎年ごとに5万6000人ぐらいです」と志賀さん。今度は教室全体からホ〜ッという声が漏れる。
生徒も先生も間違える「がん授業」がテンポよく進んでいく。
「ちなみに私は45歳で、中学1年の娘と小学2年の息子がいます。みなさんの同級生のお父ちゃんが、しゃべりに来た感覚で聞いてもらえるとうれしいです」
そう話すと志賀さんは柔和な顔の両頬をさらにゆるめた。
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