「ステージ4のがん」看護師が選んだ新しい生き方

職場と家族を巻き込み「仕事が趣味」を貫く

ステージ4のがんと診断された女性がその後選んだ道とは?写真は入院前日に次女と撮った一枚(写真:松本さん提供)
国立がん研究センターの統計によると、2016年にがんと診断された約100万人中、20歳から64歳の就労世代は約26万人。全体の約3割が、働く世代で発症しているということだ。
だが、治療しながら働く人の声を聞く機会は少ない。仕事や生活上でどんな悩みがあるのか。子どもがいるがん経験者のコミュニティーサイト「キャンサーペアレンツ」の協力を得て取材した。
今回は4年前、47歳でステージ4のがんと告げられた松本みゆきさん(51)のケースを取り上げる。

 

肺腺がんのステージ4で、胸膜播種(肺をふくむ胸膜にがんが広がっている状態)、胸水も溜まっている――。

松本さんがそう診断されたのは2017年6月のことだ。肺がんは4つの種類に大別でき、肺腺がんはその1つ。喫煙の有無に関係なく、若い女性も発症するのが特徴。松本さんも病名への戸惑いを振り返る。

「煙草も吸ったことがない私が肺がん?って、当初は半信半疑でしたね。でも、病気の重大さはじゅうぶんに認識していました。一緒に診断結果を聞いてくれた助産師の長女も、言葉には出しませんでしたが、たぶん『肺腺がんのステージ4=死』と連想していたと思います」

告知を受けた後、娘たちと話したこと

告知を受けたのは、助産師である長女が勤務する鳥取大学医学部附属病院だった。その後、2人でランチを食べた。

「長女から『家のこと、わかるようにしといてよ』と、淡々と言われたのをよく覚えています。おかげで私にもまだ小学生の次女がいるし、お金や家のことなど、自分が動けるうちにやるべきことをやらないと、娘たちを路頭に迷わせることになる、という気持ちに切り替わりました」

急がねばという気持ちになったのは、自分に残された時間がどれだけあるのか、わからなかったせいだ。長女は仕事柄もあるのか、告知後に感情的になることは一切なかった。

その数日後、松本さんは自宅で長女とこんな会話を交わした。

「お母さん、どうしたい?」

「いやぁ、最期は、病院は嫌だ、家がいい」

「でも酸素吸入器が必要になると、火の近くでは使えないから、この部屋がいいよね、ベッドはこっち向きだね」

「そうね。ベッドは借りられるから、買わなくていいよ」

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