壮絶な「いじめの記憶」に苦しむ47歳男性の叫び 「加害者」は普通に就職して結婚して新築に住む

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「やる気あんのか」「遊び半分で仕事してんのか」「お前じゃ務まらないから辞めろ」――。そう罵倒されるたび、泣きながら帰ったという。「自分には知的障害があるんだとずっと思ってきました」とトモノリさんは振り返る。

クビになるたび、しばらくの間ひきこもり状態になるという繰り返し。なんとかしなければと数年前に保健師に相談したところ、社会福祉協議会の就労支援担当の相談員とつながることができた。この相談員の勧めで精神科を受診、ADHD(注意欠陥多動性障害)であることがわかったのだという。その後は障害者枠で現在の会社にパートとして就職。今もジョブコーチが毎月会社を訪れ、社長を交えた3者面談を続けている。

月収はコロナ前は15万円ほどだったが、現在はシフトカットされて10万円ほど。正直、暮らしていくには厳しい水準だが、トモノリさんは「転職しても今以上の環境は望めないと思います。社長は『慌てなくていい。落ち着いて行動すればミスは減るから』と言ってくれる。(社協の)相談員もジョブコーチも理解のある人たちに恵まれました」と感謝する。

本連載で取材してきた中でも、理想的な形で「公助」の支援を受けたケースに見えた。しかし、トモノリさんは昨年来、編集部に何通もの悲痛なメールを送ってきた。

「毎日死にたいと思いながら生きています」「いつ死のうかと、それだけ考えながら通勤しています」「この無間地獄から抜け出したいですが、どうにもなりません」――。

かつての職場でつらい経験はしたが、現在の仕事に大きな不満はないはずだ。ではなぜこんなメールを? あらためて話を聞くと、希死念慮の発端は子ども時代の壮絶ないじめの記憶にあった。

ナイフを突きつけられ、汚水を飲まされた

小学校高学年のころから、クラスの同級生に背中や腹、ふくらはぎをこぶしで殴られたり、飛び蹴りを食らったりするようになった。「(加害者は)元気がいいとされている男子10人くらい。殴られるかどうかは彼らの気分次第。『あいつは頭悪いし、弱いし、何をしてもいいんだ』という雰囲気でした」とトモノリさん。

学校からの帰り道、果物ナイフを突きつけられ、側溝にたまった汚水を無理やり飲まされたこともある。翌日、「あいつんちは貧乏だから、泥水だって飲むんだ」と吹聴された。

ランドセルを持たされたり、掃除当番を押し付けられたりするのは当たり前。一度だけ担任の教師に「なんでお前ばっかり掃除をしてるんだ?」と言われたことがあるが、報復が怖くて「いいんです」と答えることしかできなかった。教師がそれ以上事情を聞いてくることはなかったという。

中でも中学校まで続いた給食の時間はひどかった。

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