「土日に5つの習い事」母子が多忙に陥るカラクリ 「ストレス」と「階層の再生産」という大問題

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多数の習い事によって分刻みの生活に陥る親子。その実態と問題点とは?(写真:筆者提供)
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2021年5月中旬、私が住んでいるシンガポールでは、抑え込んでいたと思われていた新型コロナウイルスの感染が再びじわりと広がった。市中感染が1日20~30人台となり、シンガポールの学校は5月19日から6月の休みまでの2週間、基本的にオンライン学習に移行することに。2020年4月に続き、2度目のオンライン学習となった。

2020年の時も、シンガポール政府は学校を閉めるのは最後の手段という様相だった。しかし、今回は塾のチューター経由で子どもの感染が確認されたこともあり、複数の学校の子どもたちが塾や習い事で交わることで学校間でも感染拡大することが懸念されたのだろう。

一時期、テニスなどコーチと1対1で屋外で実施できるものを除き、塾や習い事も禁止となった。オンラインに移行したものもあり、その数週間は、少なくとも送迎の忙しさがなくなった点では少し余裕ができた側面もあるかもしれない。

ジャーナリストの中野円佳さんによる連載です(画像をクリックすると連載一覧にジャンプします)

2017年にシンガポールに来て、新型コロナウイルス流行前の2018年秋から継続的に、子育て中の30人以上の親たちにインタビューをしてきた。父親もこれまで5人(うち2人は夫婦とも)に話を聞いたが、子どもの細かい予定などを把握しているのは母親であることが多く、基本的には母親インタビューとなった。

苦労するのは、対象者の確保や英語力よりも、まずは母親に時間を捻出してもらうことだ。

専業主婦の場合、一番時間を取ってもらいやすいのが、朝子どもを学校に送り出した後。シンガポールのローカル校は通常給食がなく13時半ごろ下校してから自宅で昼食を取るので、母親たちがその用意などを始めるまでの数時間。そして、共働きの場合は、母親たちが働いているオフィスの近くまで行き、昼休みに出てきてもらって昼食を取りながら話を聞くのが確実だ。それ以外では、午後や週末、子どもの習い事に送っていった後、迎えに行くまでの間話を聞くこともあった。

とにかくシンガポールの母親は忙しいのだ。そして、それは裏返せば子どもが忙しいということでもある。

忙しすぎる!子どもたちのスケジュール

いったい何にそんなに忙しいのか。子どもたちのスケジュールを母親たちに書いてもらった。

共働き家庭のKellyさん(仮名)の小学1年生の娘の1週間のスケジュール(写真①)

(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

写真①は、前回記事でも登場した共働き家庭のKellyさん(仮名)の小学1年生の娘の1週間のスケジュールだ。平日は学校の後18時まで学童(Student Care)に行き、その後木・金にPhonics(英語)、ピアノが入っている。

土曜は午前中に算数と水泳、午後にテニス、日曜日は午前中3時間中国語で、午後はコーディング(プログラミング教室)と、5種類の習い事で埋まる。

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