交渉は人生と同じ。人間力が決め手になる--『「交渉上手」は生き上手』を書いた久保利英明氏(日比谷パーク法律事務所代表弁護士)に聞く

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--交渉での個人同士の場合は。

個人の場合には気持ちがよかったからいいかとなって、損得とはあまり関係がないのではないか。たとえば、奥方との交渉では負け続けてもいいという考え方もあるし、またもう交渉はしないというのも、交渉の一種かもしれない。基本は、損得というより楽しいかどうかだ。

--「オレンジの話」の例えに説得力があります。

交渉論や仲裁手続きで、よく使われる例えだ。

ここにオレンジが1個ある。私も欲しいし、あなたも欲しい。二人の取りっこになるが、何で欲しいのか。のどが渇いているので、ジュースにして飲みたい。一方は、ママレードが好きで、この皮でつくったらさぞかしおいしいのではないかと思っている。この場合、よく理解し合ったら、汁はおまえにやるから、皮はおれにくれよといえば、それですむ。できるだけ皮を大きくむきつつ、中身はジュースだけもらう。これで納得し合える。

一つのものをめぐって敵対しているように見えるが、ほんとうは何が欲しいのか、どうして欲しいのか。コミュニケーションと、相手が何を希望しているかと察知する洞察力、理解力があれば、多分に解決できる。それがオレンジでの例えでわかることだ。

--理解力とコミュニケーションが大事と。

日本人はコミュニケーション能力がなさすぎる。決め手は人間力だ。人間が好きで人間を理解しようとする。自我だけを主張するのではなくて、相手の立場も十分理解しようとする。そのうえで調整点を見出し、それが結果的にはウィンウィンの交渉になることもある。

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