交渉は人生と同じ。人間力が決め手になる--『「交渉上手」は生き上手』を書いた久保利英明氏(日比谷パーク法律事務所代表弁護士)に聞く

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--大きな流れとは。

交渉は人生の中で行う。互いに幸せになるために交渉すると考えると、相手を理解することに尽きる。理解をし合って、交渉すれば、そんな変な解決にはならない。理解が足らず、思い込みがある、あるいはやっつけようという心のバイアスがあると、結果的には不幸せな交渉をもたらす。

不幸せな結果として、そのときは負けとなるかもしれない。しかし、それは長い目で見れば、そのときの一瞬。相撲もそうだが、その場所での勝負で勝っただけで、次の場所でまたぶつかり合う。前に負けたほうも、今度はこう工夫しようと進歩してくる。交渉は進歩につながるような学ぶ機会、そういう思いで臨むことだ。そうなれば「交渉上手は生き上手」に本当になれる。

--個人同士と法人とでは、交渉への臨み方は違いませんか。

個人の場合はやさしさが決め手だろう。人間関係が中心だから、やさしさは必要だ。そこでは損得をあまり考えないほうがいい。個人は楽しい、うれしい、気持ちいいと感じていられるかが、交渉のキーポイントとなる。

--ビジネスでは。

ビジネスは損得を考えないと始まらない。そこは明らかに違う。ただ損得といったときに、短い間での損得だけを考えるか、ロングレンジで見るか。

たとえば、100万円の提示にそれで買うか、80万円に値切るか、50万円までたたくか。50万円なら勝ち、100万円では負けといえるかどうか。いわれたとおり100万円で買ったら、あの会社にはきちんとした見積もりを持っていけば、無茶な買い方はしてこないとの定評をつくる。これがレアアースなら、ものが払底しているときにも納品してくれるかもしれない。長期的な取引ができれば、それは得となる。

ビジネスの場合は、特に信用と絡む。ただし、「信に過ぎれば損をする」と、伊達政宗の言葉にあるようだ。信は大事だが、信を重んじすぎると損をする。そのバランス感覚も必要になってくる。

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