交渉は人生と同じ。人間力が決め手になる--『「交渉上手」は生き上手』を書いた久保利英明氏(日比谷パーク法律事務所代表弁護士)に聞く
人は一人きりでは生きられない。二人以上になれば交渉がつきもの。弁護士40年の「久保利流交渉術」は辣腕のイメージと違いテクニックを弄さないという。「交渉は人生と同じ、決め手は人間力」と説く。
--交渉は勝った負けたではない?
おこがましい言い方をさせてもらえば、40年の弁護士人生を振り返ると、結局、勝ったと思えば負けたり、負けたと思えば勝ったり、「禍福は糾(あざな)える縄のごとし」だった。人生は勝ったか負けたかのデジタルで考えてもしょうがないと思うようになった。
--著者のイメージはハードネゴシエーターです。
防弾チョッキを着て総会屋と戦ったように見えたかもしれない。それは総会屋が憎いというよりは、そういう総会屋に付け込まれる会社に弱みはないのか。その弱みを早くなくそうと訴えた。いわば敵は総会屋ではない、内にある。ハエが寄ってくるのは、わが社に腐っているところがあるから。そこを直そうと取り組んだ。そういう取り組みは外には見えにくい。
--勝ちが負けになったり、負けが勝ちになったりしたとも。
勝ったと思っていると、それが増長を生んで負けの始まりだったり、負けたと思ったら、その会社がコンプライアンスに気づき、負けたことをテコにして規律を正し、いい会社になって業績も上がるとか。多面的重層的に見ないと真実に到達できない。ハードネゴで勝てばいい、やっつければいいという交渉は、お互いをハッピーにしないのではないか。大きな流れを見ながら交渉しないと間違う。