消費税アップが「景気悪化」を加速させる納得理由 お金を使えば使うほど損と思う人が増えるだけ
スティグリッツは、「人々が完全な情報を持っていない」ときの経済行動を研究しました。
例として挙げたのが「レモン問題」です。レモンとは中古車のこと。中古車は値段を下げれば下げるほど売れるかと思いきや、値段を下げすぎると、「完全な情報」を持たない買い手は「これは欠陥車ではないか」と疑うため、逆に売れなくなるのです。
売り手は完全な情報を持っているが、買い手は完全な情報を持っていない。このように情報が非対称であると、消費行動は合理的でなくなるのです。カーネマンは「人々が合理的に判断するというのは嘘だ」と主張しました。
人間は得よりも「損」に大きく反応する
カーネマンが提唱したプロスペクト理論は「人間は得よりも損に大きく反応する生き物だ」というものです。
例えば、100億円持っている人と、10万円持っている人が、どちらも1万円を失ったとします。100億円持っている人にとっては1万円など、さしたる損ではないように思えますが、10万円の人が1万円を失ったときのショックと、ほとんどかわりないことがわかったのです。それは、「まだ残り99億9999万円ある」という富の絶対量よりも、「1万円を失った」という損失のほうに、感情的に反応してしまうからだそうです。
このような心の動きを、合理性を欠いている、とカーネマンは言うのです。カーネマンが言うように、合理的ではない偏った判断のことを、心理学用語では「認知バイアス」と呼びます。
ここからは、「認知バイアス」について、いくつか例を挙げて、説明していきます。次の2つのうち、どちらのほうが、あなたの感情が強く揺さぶられますか?
B:10万円で買った商品を別の店で見たら9万円で売っていた
Aはつまり「1万円得した」ケース、Bは「1万円損した」ケースです。もちろん、1万円得すれば嬉しい気持ちになります。しかし現実には、「1万円損した」ときのショックは、それを上回りはしないでしょうか。
実験によると、損と得とではその心理的なインパクトには2.25倍の差があることがわかっています。1万円を損した不快感は、2万2500円を得したときの喜びと、ようやく釣り合うというイメージです。
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