消費税アップが「景気悪化」を加速させる納得理由 お金を使えば使うほど損と思う人が増えるだけ

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そこで私は考えました。カーネマンがいう通り、「人間は得よりも損に強く反応する」というなら、消費拡大のためには、「お金を使わなければ損だ」という心理を刺激するといいのではないか、と。

具体的には、減税して国民の可処分所得を増やすのではなく、むしろ所得税を上げて、そのぶん経費をもっと認めるのです。経費が認められた上に、所得税が上がるとなれば「使わなければ損だ」という心理になります。

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かつて景気が良かったころの日本企業は、法人税が高いかわりに大幅に経費を認めてもらっていました。この場合、どんどん経費を使って、営業利益を少なくしていかなければ損だ、という心理が働きます。また、「どうせ税金で持っていかれるぐらいなら、従業員の給料を上げよう」と企業は考えました。こうしてお金が社会を循環し、景気を支えていたのです。

会社員個人に対しても、副業のための経費を広く認めるようになれば、「税金でとられるぐらいなら、経費として使ってしまおう」と考える人が増えて、かなりの消費の底上げが期待できるのではないでしょうか。

消費税増税が「不景気」を招く納得理由

レジ袋の有料化も、損失回避の法則のよい例です。「レジ袋を断ると、2円、値引きされる(得をする)」としていた頃はレジ袋をもらう人が減らなかったのに、「レジ袋を下さいと言ったら、2円取られる(損をする)」ようにしたら、レジ袋をもらわない人が激増しました。

やはり、得よりも損に強く反応したのです。こうした人間の心理からすると、消費税率を上げることは、「お金を使わなければ損だ」ではなく「お金を使えば使うほど損だ」ということになり、消費が停滞し、景気に悪影響を与えてしまいます。

世界の趨勢は消費税を上げる方向ですが、これではますます損失回避の法則が働き、消費は落ち込んでいくことでしょう。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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