(第33回)【変わる人事編】1990年代までの学生といまの学生、人材劣化に対応して変化する人事戦略

(第33回)【変わる人事編】1990年代までの学生といまの学生、人材劣化に対応して変化する人事戦略

佃 光博

 これまでの2回は、日本の就職システムと現在の新卒採用/就職戦線の異常さについて取り上げた。今回は教育について取り上げてみよう。日本では社会人として通用する人材教育の仕上げを企業が担っていた。企業が明確な教育カリキュラムを持っていたわけではない。新入社員研修が終わってからOJTという名の下に職場に放り出せば、面倒見のいい先輩、口うるさい上司によって勝手に育っていった。

 多分1990年代初頭くらいまでは、そんなのどかなシステムでも人は育った。企業経営者は「人事がそこそこの学生を採用してくれれば、後はなんとかなるものだ」と信じていた。実際に不都合はなかった。ところがその後10年経った2005年ごろになると、こんな牧歌的な人材システムは終わっていた。いくら学生を絞り込んでも、どうにもならないほど劣化してきたのだ。そんな人材劣化時代の事例と企業の対応を紹介してみよう。

●仕方のないヤツでも仕事が育ててくれた1990年代以前

 人が集まれば問題は起こる。社員数は数百、数千、数万と企業によってさまざまだが、いずれにしてもある頻度で問題は起こり、人事は後処理に追われる。

 ある部品大手メーカーの新入社員がホテル合宿で、部屋のビデオ装置を壊した。無料でビデオを見ようとして回路をいじったのだ。電気系出身なら簡単なことだろう。元に戻しておけば露見しなかっただろうが、その新人は忘れてしまって放置。そしてホテルからクレームが届き、引率していた人事はホテルに平謝りし、新人にきつく注意した。

 別の企業の話だが、社員旅行で温泉に泊まった。20代の仲良し社員数名が女湯の前を通りかかり、「のぞいてみろよ」「いやそれはいけないよ」とじゃれ合っているうちに1人が間違って女湯の脱衣場に入ってしまった。折悪く女性が着替えているところだった。女性の叫び声であわてて男性は飛び出した。仲間が「女の人がいたのなら謝っておかないとまずいだろう」と言うので再度「すみません」と脱衣室に入ったところ、女性は本当に入湯する姿になっていた。そして彼女はなんと婦人警官。パトカーが出動する大騒ぎになった。
 この騒ぎは役員会に減俸なしの「懲戒処分」として報告されたが、取締役たちは苦笑いしていたと言う。つまり「仕方のないヤツだな。これから気をつけろよ」という苦笑いだ。

 50代の取締役にも20代の新米社員だった頃があり、酒を飲んでの失敗、礼儀をわきまえずにクライアントを怒らせ上司にしかられた思い出はある。だから「仕方のないヤツ」でも大目に見る。そうやって新人は一人前に育っていくと信じていた。そんな寛大で、大ざっぱな教育でも1990年代までは健全に機能していた。しかし21世紀に入ると、「放っておいても仕事が人を育てる」仕組みが機能しなくなっていく。

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