●厳選採用の理由。人材分布が2:6:2から3:6:1に劣化
「厳選採用」という言葉が就活生を脅かしている。企業は学生を厳選し、もし基準に見合う学生がいなければ、予定数に達していなくても採用を打ち切ってしまうというものだ。社会は計画によって動く。いったん決められ取締役会に報告された採用予定数によって人事は拘束され、予定数を取り切るまで頑張るのが採用の常識だったから、「いい学生が取れないなら予定数に達しなくても採用を打ち切ります」という「厳選採用」は21世紀に現れた新しい採用スタイルだろう。
もちろん、「厳選採用」という言葉自体は1990年代からあった。しかしそれは「弊社は厳しく吟味します。自信のある学生だけ来てください」というメッセージにすぎなかった。その頃は採用を継続すれば、なんとか基準に達する学生(我慢できるレベル)を採用できた。しかしいまは採れる学生のレベルと数に対して、採用のコストがかかりすぎる。
また人事を数合わせで予定数確保しても、入社後にOJT配属すると「何でこんなひどいのを回すのだ」と現場から非難の声が上がる。だから採用を打ち切る「厳選採用」に変化したのだと思う。
どの時代にも優れた人材はいるし、だめな人材もいる。優秀人材に関する「2・6・2の法則」を知っている人事は多いだろう。10 人の人間がいれば、ぶら下がりが2 人、そこそこの普通人材が6 人、優秀なのは2人だけ、という経験から導かれた法則だ。企業人事だけでなく、教育関係者も納得できるだろう。
しかし、最近は事情が変わってきたようだ。複数の人事担当者から「2:6:2だったのは10年前までのこと。この数年は3:6:1。ダメな若者が急増し、優秀な学生は半分に減った」と聞いた。この嘆きは近年に生まれたと思う。2000年代前半は就職氷河期が続いていた。回復し始めたのは2004年の頃からだ。2005年あたりから縮こまった採用から積極的な採用へと変わった。
人事というのは因果な職業だ。景気が上向き、自社が積極採用に転じるときは、他社も同じ動きを示すから、なかなか採れない。そこで仕方なく「何とかなるだろう」という中途半端な学生も採用した。従来なら確かに何とかなった。しかし採用してみると何ともならなかった。いまの新人は何を教えても素直に聞くだけ。言われたことしか実行しない。そして育たない。人事はそんな若者にまだ戸惑っていると思う。
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