(第33回)【変わる人事編】1990年代までの学生といまの学生、人材劣化に対応して変化する人事戦略

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●経営トップと人事の問題意識には乖離、温度差がある

 私が採用人事担当者から、「新入社員の質が低くなりすぎて困っている。このままでは従来の学生の質が確保できない」という声をはじめて聞いたのは2002年だったと思う。そして多くの人事が「学生の質」を問題にし始めたのは、2004年ごろからだと記憶している。ある人事コンサルは2004年、2005年あたりにガクンと落ちて、以来ひどくなるばかりだと分析している。

 公式に企業の人事からこのような声を聞く機会は少ないが、プライベートな酒席で話を聞くとどこの企業も困り果てている。しかしもっと大きな問題は、企業のトップ層がこの (もしかすると企業活動にとって致命的な) 問題の重要性を十分に認識しているとは思えないことだ。「自分たちの若い頃も学生の間は遊んだものだ。会社に入ってから鍛えれば一人前に育つ」と自分たちの成功体験をもとに思考する経営層がいまだに多いように思える。

 人事と経営トップの認識の食い違いについて興味深いのは、日本生産性本部が1月に発表した【2009年度「人事部門が抱える課題とその取り組み」に関するアンケートの調査結果】だ。
人事課題に対する経営トップの認識度合い
※日本生産性本部【2009年度「人事部門が抱える課題とその取り組み」に関するアンケートの調査結果】より
 人事が鋭敏なのに経営が鈍感な課題(たとえば非正規従業員の処遇)、人事と経営の一致度が高い課題(たとえば組織風土の変革、次世代幹部候補の育成)がある。優秀な人材の確保・定着、従業員の能力開発、従業員のモチベーション向上なども一致度は60%を超えている。組織風土改革、能力開発、モチベーション向上はいずれも教育の範疇に属する。
 ただし不思議なことに、組織風土を変えてモチベーションを向上させるために不可欠と思える賃金制度・評価制度、従業員のメンタルヘルス対策、総労働時間短縮などについて、経営はそれほど大きな関心を持っていない。悪く言えば建前的な項目にYesと答えても、実現するための施策には関心を持っていないように見える。

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