ワクチン「職域接種」大号砲に戸惑う企業の本音 業界で温度差、職場の"不公平感"解消に難儀も

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本来なら、店舗こそ接種の優先順位は高いはず。しかしある小売り大手の幹部は「一定数の社員がまとまっている本社は別として、各所の人員が多くない店舗従業員は(ワクチン接種を)自治体にお願いする可能性もある」とも打ち明ける。

他方で、こういった企業や、職域接種を行いにくい中小企業の従業員、個人事業主などの”受け皿”になろうとする会社もある。

楽天グループは自社の従業員へのワクチン接種に加え、本社周辺の地域住民向けにも、接種対象を順次拡大する方針だ(撮影:今井康一)

GMOインターネットや楽天グループは、従業員向けの職域接種に加え、それぞれの本社所在地周辺の地域住民向けにも接種対象を順次拡大する方針だ。

また、ベンチャーキャピタル大手のコーラルキャピタルは医療法人と連携し、ベンチャー企業のための合同職域接種を開始予定。

対象は自社の出資先ベンチャーに限定せず、2万人規模の接種を目指すという。

「外部開放」では別の課題も

むろん、職域接種の対象を自社従業員以外にも広げるとなれば、より難易度は上がるだろう。 GMOはこれまでも、職場でのインフルエンザワクチンの接種を自社設備内で毎年行ってきた。今回もそれで培った予約管理などのノウハウを活用し、外部開放しても混乱を来さないオペレーションを模索するという。

自治体も「接種クーポン」を配布してワクチン普及を急いでいる状況下、行政との連携における課題もある。「(職域接種を受けた人の)接種情報を(自治体などに)提出する必要があると想定しているが、 何をどこで報告するかなどは明確に指示してもらいたい。またその場合、余計な労力がかかる紙ではなく、デジタルデータでの提出としたい」(GMO広報)。

職域接種が進めば、自治体による受け付けの混雑緩和も見込める。不公平感というジレンマを乗り越え、企業主導でワクチン接種を広げられるか。各社各様の試行錯誤が続く。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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