「1日100万回接種」という政府目標達成の切り札になるか。
企業や大学の主導で実施できる、新型コロナウイルスワクチンの「職域接種」が6月21日に本格始動する。アメリカ・モデルナ製のワクチンを使用し、約1000人分(1人2回)を接種できる企業や大学から始める。企業側の準備状況や自治体ごとの高齢者向け接種の進捗次第で、6月21日より早く始めることも可能としている。
政府は厚生労働省のホームページに実施希望団体向けの申請フォームを設置、6月8日から受け付けを開始した。
ソフトバンクは10万人に実施表明
これに先立ち、すでに多くの企業が対応意思を表明している。
ソフトバンクは、携帯電話ショップやコールセンターの従業員も含め計10万人規模の職域接種を実施すると発表。通信大手はNTTドコモ(約10万人規模)、KDDI(約1万1000人規模から順次拡大)も、規模の大小はあるが実施の方向だ。
もっとも業界によっては企業間で温度差もある。商社では、伊藤忠商事がいち早く7500人規模の職域接種実施の方針を打ち出した。一方、三菱商事は「実施は決定した。人数などの詳細は今後開示する」(広報、6月9日時点)、住友商事は「(打ち手の候補となる、自社の)産業医にも通常業務があり、その調整の問題がある」(広報、6月8日時点)との回答にとどめた。
【2021年6月9日11時56分追記】初出時の表記を一部修正いたします。
ワクチンや備品は各社の希望に応じて政府が供給する予定だ。ただ打ち手となる医療従事者や接種会場の確保、予約管理などのオペレーションは会社側で行う必要がある。大規模な職域接種の実施は、企業にそれなりの負担を強いる。
加えて、「対象範囲にどうしても優先順位をつけなければならず、アルバイトや子会社社員などの不公平感を拭えない」(ある東証1部上場企業の広報担当者)という声も聞かれる。