理科実験を導入する塾が体現する理想の中学受験 「うのき教育学院」は過当競争から一線を画す
中学受験塾でも行う「本物に触れる授業」
白衣を着た講師が、水を入れた注射器を1人に1本ずつ手渡す。注射器の先にはキャップが付いていて、ピストンを押しても水が出ないようになっている。
「注射器を押してみて、空気を入れたときとの手応えの違いを感じてみて。さっき、中が空気だったときには、ピストンがちょっと沈んで押し戻されたでしょ。でも水だとほとんど動かないよね」。それでも無理矢理ピストンを押し込もうと力む子どもがいる。「おいおい、体育じゃない」。子どもたちが笑う。
これは東京都大田区にある中学受験専門塾「うのき教育学院」での、小学4年生の授業風景。空気と水の性質の違いを体感するための理科実験だ。
次にフラスコに水を入れ、アルコールランプで沸騰させる。フラスコ内が水蒸気でいっぱいになった頃合いを見計らってフラスコの口にゴム風船を装着する。そのままフラスコを熱し続けると、風船は膨らんでいく。風船の破裂を恐れる生徒たちは「きゃー」と悲鳴を上げる。
しかしフラスコを水で冷やすと風船はみるみるうちにしぼむだけでなく、フラスコの中に吸い込まれていき、しまいには内側で丸く膨らんだ。生徒一同「えー、なんでこうなるの?」となったところで実験は終了。通常の授業を行う教室に移動し、「教科書」の「とじこめた空気と水」という単元を開くというわけだ。
中学受験専門塾なのに理科実験室がある。その理由を代表の岡充彦さんが語る。前職を含めれば、この道30年以上のベテランだ。
「小学校では担任の先生によって実験をしっかりする人としない人の差が大きい。実験・観察問題として出題されることが多い中学受験理科において少しでも不公平性を是正したいと思って理科実験室を作りました。テキストの文や図の意味も、『触る』『見る』『嗅ぐ』『聞く』ことで一発でわかりますし」(岡さん、以下同)
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