大坂なおみ「全仏棄権」では解決しない根本問題 テニス界は新たな問題に直面することになる
大坂の知名度や、アスリートのメンタルヘルスの問題に対する認識や配慮の高まりを考えれば、モレットンをはじめとするグランドスラムの首脳陣が大坂から明確な説明を受けてもなお、彼女と共により穏便かつ短期的解決策を検討しないということはなかっただろう。
しかし実際には、彼らは説明を受けるどころか、暗闇にあまりにも長く取り残されてきた。大坂は大会前に、過剰な質問の繰り返しや、自信を下げるような質問を挙げ、選手とメディアの関係の改善を訴えることに集中していた。プロのジャーナリストがテニス選手や試合についてもっと知るためには、よりよい方法があるはずだ。
厳しい質問にさらされ続けたサンプラス
テニスチャンピオンやその候補選手は何十年にもわたって、会見会場でそのような困難に対処してきた。大坂がクレーコートでの弱点についての質問に敏感に反応するのであれば、ピート・サンプラスがローラン・ギャロスでの優勝を目指して10年以上も失敗し続けてきたことについて質問されたときにどのように感じたかを想像してみてはどうか。
それでも、彼は記者会見の度に顔を出し、賞を追い続けた。ヤナ・ノボトナも、1998年にウィンブルドン選手権でやっとのことシングルスのタイトルを獲得するまでそうしてきた。
ビリー・ジーン・キングが好んで言うように、プレッシャーは特権であり、繰り返しの質問は不都合ではあるが、正当な公共の関心の反映でもある。大半が好意的だったメディア報道に後押しを受けて、大坂は世界で最も稼いだ女性アスリートとなった。昨年は5500万ドル以上を稼ぎ、そのほとんどがスポンサー契約によるものだった。
全仏1勝目を勝利したウィリアムズは、大坂に対して同情的だ。「なおみの気持ちはよくわかる」と彼女は語った。「彼女を抱きしめてあげたい。私も彼女と同じ経験をしている。私たちの性格はそれぞれ違うし、私たちはそれぞれ違う人間だ」。
「私は厚いから」と、ウィリアムスは話した。おそらく皮が厚い、という意味だろう。「中には薄い人もいる。みんな違うし、同じ状況でも感じ方はそれぞれ違う。(この問題については)彼女がベストだと思う、彼女がやりたいやり方で対処させてあげるべきだ」。
非常に優しい言葉だが、今回についてはどこで間違いが起こったのか学ぶ必要がある。今回の不幸な状況は初動が間違っていなければ、大坂が全仏オープンの邪魔になったと感じ、1カ月後のウィンブルドンに出場できるかもわからないままバッグを詰める必要などなく、彼女は2回戦に進むことができたかもしれない。
しかし、それで大坂が直面する根本的な問題が解決することもなかっただろう。