経済危機についてこれまで述べてきたことを振り返ってみよう。たとえ話で言えば、次のようなことである。
アメリカ君という浪費家が「車を作ってくれ」と言うので、汗水たらして働き、注文に応じた。ところがアメリカ君は、「今はカネがないから、代金分を貸してくれ」と言う。代金を回収して使ってしまうよりましだと思って貸したのだが、踏み倒されてしまった。
今にして思えば、車を作るカネをレストランで使って、優雅な生活を送るほうがずっとよかった。また、代金はきちんと回収して、わが家の改築にあてるべきだった。そうすれば今頃は快適な生活を送れていたことだろう。
それだけではない。車を作るために増設した作業場は、アメリカ君が車を買ってくれなくなったので、無駄なお荷物になってしまった。その維持費がかかるので、生活は圧迫され続けている。「踏んだりけったり」とは、まさにこのことだ。
ついでに言うと、かの浪費家アメリカ君は、わが家とは比べ物にならないほど豪勢な家に住んでいる。そればかりでない。相当のワル智恵があるらしく、借金しているのに利子収入を稼いでいるのだそうだ。見習いたいものだが、いったいどうすればよいのやら……。
このことを経済学の用語を使って言い直せば、次のようになる。
この15年間のマクロ経済のポリシーミックスは、「緊縮財政、金融緩和、円安」であった。これは「積極財政、金融引き締め、円高」と対比されるものだ。この結果は、GDPの構成比にはっきり表れている。
第11回の図で示したように、公的資本形成の比率が低下し、外需の比重が増加したのである。輸出が増えたが、黒字は資本勘定でアメリカに還元した。つまりベンダーファイナンスを行った。しかし、それで蓄積した対外資産は、為替レートの変動によって減価してしまった(100兆円も!)。国内に残ったのは、過剰設備の山である。