「輝かしい失敗」からイノベーションが生まれる訳 「オランダ発」リスクや失敗をプラスにする方法

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オランダ・アムステルダム近郊にあるリスのための屋根付きの橋と著者のポール・ルイ・イスケ氏。14万4000ユーロ(約1900万円)を投じて造られたものの、2年間で渡ったリスは1匹だけだった。これこそ「輝かしい失敗」の一例である(写真:ポール・ルイ・イスケ)
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「イノベーションには失敗が不可欠」と言うけれど……。では、どんなふうに失敗するのか?
今の社会は、変化のスピードが速く、ますます複雑になってきている。経済や政治でも大規模な変革が続き、過去の知恵や経験に基づく推論は通用しない。予想もしない出来事が次々と起こってくる。今までのように成功体験ばかりを賞賛し、失敗を隠そうとする風潮は不合理だ。失敗は次の成功につながる学びの宝庫である。
このたび、オランダのビジネススクールで失敗研究に取り組んでいるポール・ルイ・イスケ教授の著作『失敗の殿堂:経営における「輝かしい失敗」の研究』が邦訳出版された。本稿では、イスケ教授が、失敗を前向きに捉え、そこからどのように新たな価値を創り出す学びに変えていくのかを解き明かす。

「輝かしい失敗」が成長をもたらす

私が現在、情熱を注いでいるテーマは「輝かしい失敗」です。私たちは複雑な世界に生きているので、共に働き、共にイノベーションに励み、共に失敗し、共に学んでいくことが大切です。

『失敗の殿堂:経営における「輝かしい失敗」の研究』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

現在、私たちが暮らす世界は、スイスの機械時計のように入り組んでいるけれども解明できる構造ではありません。建物や道路など目に見えるシステム、社会や経済など目に見えないシステムなどが組み合わさり、動的に変化していく複雑系の中にいます。

そうした複雑な世界は予測不能です。これまでのように1年後、5年後、10年後の計画を立てても、途中で状況が変わる可能性があります。たとえばオリンピックにしても、10年前に東京が開催地に決まったときに、コロナ禍が起きることは誰も想像していませんでした。

私たちはこうした複雑な状況に対応していく必要がありますが、そこでは危機にも直面します。その際に重要になるのが、「アンチフラジリティー(反脆弱性)」です。これは、危機を経ることで、より強くなるという考え方です。

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