「輝かしい失敗」からイノベーションが生まれる訳 「オランダ発」リスクや失敗をプラスにする方法

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私はオープンイノベーション担当教授として、いろいろな人が一緒にイノベーションに取り組み、ネットワークなど連携する仕組みをつくろうとする姿を見てきました。そのときに、ぜひ失敗してほしい。ベストを尽くしたなら、失敗しても叱ったり訴えたりせず、受け入れて、そこから前に進めばよいと、奨励してきました。

組織の中でも、失敗の権利を認めれば、よりよい人間関係が生まれ、成功につながります。ぜひ「輝かしく失敗する権利」を尊重してほしいと願っています。

失敗を型に分けて考える

ところで、失敗から学ぶためのいいやり方はどのようなものでしょうか。私は何百もの失敗を分析してきましたが、そこで重要なのが、「失敗のインテリジェンス」を使うことです。これは単に失敗を認識することではなく、適切な情報をもとに失敗パターン(型)を理解し、適用する。あるいは、新しい型を突き止めたり、つくったりすることを指します。

型の例として、オランダで以前、アムステルダム近郊の森の中に高速道路を開設しました。その結果、木が伐採され、リスの生息地が道路で分断されてしまったのです。リスが道路を渡るのは危険です。そこで、14万4000ユーロ(約2000万円)を投じてリスのために屋根付きの橋を設置しました。

ところが、2年間でそこを通ったリスは1匹だけでした。あれほどお金をかけて、リス1匹なのかと思うかもしれませんが、これこそが輝かしい失敗です。誰かにとって価値があると思って情熱を持って取り組んだけれども、本当に必要としている当事者(リス)は存在しなかったのです。

これは「テーブルの空席」という型に当たります。同じような失敗パターンは、世界の政府、学校、企業などでも見られます。つまり、当事者に意見を聞かなかったり、当事者が欠席のまま、意思決定をしてしまうのです。型を使うことで、「この失敗はこの型に当てはまる」というように、何が起きているかを早く見抜き、学習や共有が進みます。

私の分類では、輝かしい失敗は16の型があります。ほかの人が同じような失敗をしたことがわかれば、同じ轍を踏むのを避けられます。プロジェクトを始める前や途中にいずれかの型に当てはまらないかを見ることで、足りない部分を確認したり、何が起こりそうかを事前に知ることができます。

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