医療政策で「需要」と「ニーズ」を使い分ける理由 知っておいたほうがいい「医師誘発需要仮説」

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この高額療養費制度は、きめ細やかな制度設計になっているというか、複雑な制度であって、とてもとてもインタビューで答えるのは至難の業である。次は、70歳以上の人たちで、現役並み所得ではない「一般」の人たちと「住民税非課税」の人たちの高額療養費制度である。70歳以上の人たちに準備されている外来の上限1万8000円は、69歳以下の人たちにはなく、年収約370~約770万円の人で医療費100万円であれば9万円程の上限額、住民税非課税者はジャスト3万5400円である。

いま、参議院で議論されているのは、「75歳以上の窓口負担を、単身なら年収200万円以上、複数人世帯なら75歳以上の年収合計が320万円以上あれば負担割合を1割から2割に引き上げる」というものである。75歳以上の20%にあたる約370万人が対象になるとの試算に基づいて予算が検討されていくのであろうし、異なれば予算は事後的に補正されることになる。未来のことゆえ確定的なことはわからず、それは仕方がない。

入院であれば多くが高額療養費制度の対象になると考えられるために、外来での月1万8000円の範囲内で、今回の1割から2割への改革の影響がでることになるのだろう。こうした高額療養費制度があるために、今回の制度変更で、高齢者1人当たりの平均窓口負担額は年8万3000円のところ、仮に2割負担となっても、配慮措置期間は年2万6000円増、その後は8000円増との試算もある。

では、75歳以上の人たちは、これまでの自らの外来の負担をどのように受け止めているのだろうか。『2017年受療行動調査』(厚労省)によれば、75歳以上の人たちが、外来で請求された金額に対して、負担に感じる、やや負担に感じる人たちを合わせて1割程度で、若年層の3割よりも低い、ということである。

社会保険の負担問題を考える際には、支払い能力に応じて負担し、ニーズに応じて給付を受けるという社会保険の原則は重要である。物事、原則を外れると、時代時代の中でさまざまな問題が起こってくるものである。

今の時代であれば、窓口負担に年齢基準を設けると世代間対立を生みやすくなるし、所得基準を設けると制度が複雑になり、就労調整への誘因をもたらすことになる。人生100年時代に向けて高齢者が長く働けるワークロンガー社会を目指し、年金の繰り下げ受給やWPP(Work longer, Private pension, Public pension)を勧める方針と矛盾するという問題が起こる(WPPについては、『人生100年時代の公的年金保険改革とは何か――2019年年金財政検証のポイントを読み解く』(2018年12月8日)を参照)。

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