75人クラスターの病院が苦悶した完全収束の道程 患者やスタッフの心身のケアも求められた

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酒向:また、ありがたいことに地域の小学生から「看護師さん頑張って」というメッセージをいただいたり、ある乳業会社さんからは感謝の気持ちのアイスクリームをいただいたり、さまざまなご支援もいただきました。そうしたほっこりとする時間を今は大切にしながら、少しずつ自分たちの原点に戻りましょうと皆に話しています。

乙武:ちなみに、酒向院長ご自身のメンタル面は……?

酒向:私は逆境に強いタイプなのですが、さすがにクラスター期は2週間ほど、夜眠れない日が続きましたね。スタッフには気づかれないように振る舞っていましたが。

コロナウイルスが経営を直撃!

乙武:こうした有事というのは当然、病院の経営面にも影響しますよね。たとえばリハビリが行えなくなったことで、返金の義務が生じるようなことはあるのでしょうか。

酒向:返金はありませんが、この期間はリハビリ治療料が取れないんです。100人いるリハビリスタッフの売り上げがゼロになるわけですから大変です。しかし、クラスターを起こした病院の責任なので、これも仕方のないことです。

乙武:また、得られるはずの収入が得られない半面、本来であれば必要のない労力や出費というのもありますよね。こうしたダメージに対する補填や補償というのは……?

酒向:基本的にはありませんでした。全100床が満床の状態でクラスターが発生し、退院する患者さんはいても、新たな入院は許されませんから、どんどんベッドが空いていき、その分の売り上げは純粋にマイナスになりました。このクラスター下の経営的ダメージは深刻でしたので、東京都や国には何度も相談しました。その結果、この4月以降に回復期病院にも新しいコロナ関連の加算や補償がつきましたので、進言した甲斐があったと思います。

乙武:トータルの損害額は……。

酒向:とてつもない金額になりますよ(苦笑)。でも、当院ではクラスター発生以降、コロナ感染後の患者さんを全面的に受け入れる方針を決め、少しずつ新しい患者さんが入ってきました。コロナ感染後は行き先がなくて困っていた患者さんも大勢いらっしゃいました。

乙武:なるほど、それは患者さんの側も助かったでしょうね。

酒向:はい。当院の回復期病棟機能をいい形で運用できました。

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