「アナ雪」チームが圧倒的な改善力を発揮できた訳 自己保身に走る人を救うリーダーの強い言葉

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翌朝、『アナ雪』の制作責任者を務めるピーター・デル・ヴェッチョはチームにこう言った。「うまくいっていないことに目を向けるのではなく、何が正解となりうるかを考えてほしい。もっと大きな希望を思い描いてくれないか。何をしてもいいとしたら、みんなはスクリーン上でどんなものが見たい? 」。

ヴェッチョは「証明」のプレーで時間を無駄にすることなく、「改善」のプレーを呼びかけたのだ。

すでに出来上がっている作品にとらわれなくていいという許しが出ると、クリエイターたちは安心して新たなアイデアを投げかけるようになった。誰かを怒らせることや仕事を増やすことに気兼ねしなくてよくなったからだ。

「エルサは悪役でなければならないか?」

「エルサとアナが姉妹だとしたらどうなる?」

「エルサが自分自身のことを恐れているとしたら? そして愛する人を傷つけるのが怖いと感じていたら?」

生まれ変わってメガヒットになった『アナ雪』

エルサとアナを姉妹にするというアイデアを検討するうちに、ありきたりで深みのない悪の女王ではなく、自分でもよくわからない力に翻弄される人物像が浮かび上がった。

新しいバージョンの『アナ雪』では、エルサは自らの力を恐れ、妹のアナを守るために彼女を遠ざけようとする。一方のアナは明るく元気に満ちているが繊細で、姉妹の絆を取り戻す方法を探している。

このふたりの思いの衝突がストーリーの中心に据えられ、テーマがまとまると、エルサの旅路は恐怖心がすべてで、アナの旅路は愛がすべてであるとはっきりした。

エルサが悪役でなくなると、歌曲の制作担当者は、エルサに注目を集めるための新たな曲を作れると考えた。そうして誕生したのが、「自分が生まれ持った能力におびえながらも、それを懸命にコントロールしようとする少女」について歌った「レット・イット・ゴー」だ。

この新しい『アナ雪』が公開されると、ディズニーによるアニメーション映画史上最大のヒット作となった。「レット・イット・ゴー」は大評判となってビルボード・チャートにランクインし、数千万の売上を記録した。オンラインでの再生回数は10億回を超えたという。

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