「死ね」「バカ」「アホ」「くそ」「お前本当にダメだな」……。昔はどこにでもいたパワハラ上司ですが、決して紳士的とは言えなかった新聞業界で10年、もう少しお行儀はいいけれど、体育会系カルチャーの残る広告会社系PR会社で9年の社会人生活を送った私も、理不尽な上司に数々遭遇してきました。
罵倒されて、ぼろぼろと涙した日も、1時間ごとにポケベルを鳴らされ、行動を確認され、ひたすら嫌味と文句を聞かされ続けた日も、今となっては(腹立たしいけれど)懐かしい思い出です。
「海外のコミュニケーション」は、れっきとした「科学」
「怒鳴るのも、怒るのも、時には手が出るのさえアリ」の世界で、スポ根的に育てられてきた世代が今、上司になって直面しているのが、「どうやって部下を諭し、指導するかがわからない!」問題です。
強い調子で、モノを言えば、反感を持たれ、訴えられるかもしれないし、部下に辞められてしまうかもしれない。一方で、優しく接するだけでは、まったく成長してもらえない。そんなジレンマを抱えて、途方にくれている人が圧倒的に多いのではないでしょうか。
日本では、「長年の慣習と勘」でなんとなく行われている「コミュニケーション」ですが、欧米では「人類学や心理学、行動経済学」などに基づき、研究が尽くされている、れっきとした「科学」です。どのように伝えれば効果的に相手に届くのか、行動変容を起こすのかが研究され、「法則化」されています。
それに基づき、海外の一流企業は、社員に徹底して研修を施し、「リーダーとしての話し方」を叩き込むわけですが、残念ながら、日本では「社員教育に投資をしよう」という機運はあまりありません。
前回の記事でも紹介したように、企業が社員の研修などに拠出する能力開発費の「GDPに占める割合」は、例えばアメリカに比べると20分の1とまさに「雀の涙」。
外資系企業の友人に話を聞くと、リーダーとしての「考え方」「話し方」「ふるまい方」「部下とのコミュニケーション手法」などを多角的に学ぶ機会が豊富に与えられていることに驚かされます。
一方の日本企業は「釣った魚に餌はやらぬ」とばかりに、現金をため込みながら、「肝心の人材開発」をまったく進めていないわけです。
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