プロ野球「新リーグ」が九州に新設された深い訳 あえて「独立リーグ」と名乗らない理由とは

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当初、田中氏はこの企業内チームを「県民球団」に移行しようと考えた。

「熊本市のリブワーク藤崎台球場は、高校野球の聖地であり熊本球児には甲子園みたいなものですが、老朽化が進む中、改修もままならなかった。そこへ熊本地震があった。この先どうなるんだろうと考えて、熊本復興の証しとして新球場設立を、と活動を始めたんです。署名活動などもやりましたが、なかなか機運が盛り上がらない。

そこで県民球団を設立して活動することで、県民に訴えかけようと考えたんです。まず球団ありきでしたが、野球は1チームではできない。そこで大分にも働きかけてもう1球団ができて、九州リーグを設立することになった。生みの苦しみをしっかり味わいながらのスタートです」

田中氏が経営する鮮ど市場は、熊本県を中心として九州地区に直営17店舗、加盟店9店舗、グループにはフラワー事業や食肉、漬物加工業なども展開。さらにフランチャイズでフィットネスクラブ「ゴールドジム」も2店舗運営している。

「16年にわたって社会人野球チームを運営してきました。社会人野球としては売り上げ規模は最小の部類だったと思いますが、それでもここまでやってきた。だから、野球チームを運営するにはどれだけ経費がかかるのかは把握しています。また選手を管理するうえでの問題点なども理解しているつもりです。そんな中で、プロに行くような選手も育成してきたんです」

スポンサーありきでは長続きしない

独立リーグの収益構造は、プロ野球とは大きく異なっている。プロ野球ならば入場料収入、球場での物販収入、ライセンス料、放映権料などが大きな柱になるが、独立リーグの入場者数は多くて数百人レベルだ。入場料、物販だけでは運営できない。最大の収入の柱は地元企業などからのスポンサー収入になる。

(写真:筆者撮影)

「スタートラインにおいてスポンサーありきのリーグ経営では長続きしません。まずは理念、思想をもった独立した法人格として、しっかりリーグ運営をするのが重要です。私自身、会社経営をしながら野球に携わっていたので、自分たちで野球をして飯を食うという気構えがなければ続かないと考えています。

もちろんスポンサーは重要ですが、柱をもう1本立てたいと思います。それは、野球による町おこし、社会貢献です。SDGsの考え方にもつながる地域創生をつねに考えています。

私たちは、他の独立リーグよりも多くのスタッフがいます。球場でのサービスだけでなく、地域創生担当、行政担当、アジア圏などを担当する国際部などいろんな部署を設置してすでに動き出しています。球団運営は各球団に任せて、僕は先行する市場に働きかけようと考えています。だから球場に頻繁に足を運ぶことはありません」

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