新型コロナ禍で、昨年は少年野球界も大幅に活動が縮小された。しかしそんな中でも、野球を通じた子どもの育成に尽力した指導者は全国にいた。
いささか旧聞になったが、そんな中学以下の少年野球チームの指導者を表彰する「ベストコーチングアワード2020」が、今年1月23日にリモートで行われ、全国の58チームが表彰された。
これらの指導者は好成績をあげたり優秀な選手を輩出したりしたから表彰されたわけではない。
このアワードは
- ●子供たちの未来を見据え、怪我や障害を起こさないように心がけ、メディカルとコンプライアンスの両方面より指導にあたられているチーム及び指導者
- ●学ぶ意識が高く情報をアップデートして指導に取り組める指導者
という2つの基準で選考されている。今年で2年目だが、昨年よりも広範なエリアから多くのチームが表彰された。
「試合に出られなかった」息子を持つ保護者からの手紙
筆者の心に強く残ったのは、リモートで行われた表彰式で、同協会の中野司代表理事が紹介した、ある野球少年の保護者の手紙だ。
「私は、ある少年野球チームに所属する息子を持つ母親です。息子は生まれつき体が小さくて、運動神経も良い方ではなくて、それでも野球が大好きで大好きでたまらない小学校6年生です。ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手の大ファンです。あのでっかい体と豪快なスイング、いつもやばいなあと言いながら興奮しています。所属している小学校野球チームの同学年は、人数に恵まれており13人の同級生がいます。ポジションは固定で、レギュラーは4年生の春季大会から打順も含めて固定で変わらず。息子は補欠4番手と言ったところです。
先日、6年生の最後の大会と最後の対外試合がありました。約5年、息子は一度も遅刻や欠席をすることなく参加し、私や主人もチームに帯同してお手伝いをさせていただきました。しかし息子は1試合、いや1打席もバットを振ることもなく小学校野球を終了してしまいました。
その夜、家族で食事をしているとき『試合に出られなくて残念だったね』というと息子は『俺、チームで一番へたくそだからしょうがないよ』と言っているのを聞いて涙が止まりませんでした。練習試合でも息子よりうまい1学年下の子を出してみたりと、チャンスはもらえませんでした。ただただ練習して、ただただ大きな声で応援して、ボールボーイをやって、コーチャーをやって少年野球が終わってしまいました。
また監督は昭和の野球そのままの方ですし、学区も小学校のチームなので、チームを選ぶこともできずチームの伝統ということで、お茶くみ当番もあります。暴力はさすがにないにせよ、練習や試合での罵声、怒声は当たり前のことでした。また罰走や過度な練習も当たり前で、チームのエースの子は大会翌日に手術が決まりました。持っていく弁当はタッパーで小6で三合飯。今振り返ると本当にそんな野球をやらせてよかったのかと、親として思ってしまいます。本人は中学でも野球をやりたいと言います。しかし大好きな野球を楽しんでもらいたいし、いい人間関係を築いてほしいとも思います」
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