前出のコーチングアワードでトリプルスターを受賞した八幡イーグルス、東京インディペンデンツの監督、GMを務める杉山剛太氏はこのことをどう思っているのか?
「この話を聞いて真っ先に思ったのが、“野球を嫌いにならないでほしい”ということです。この子が中学でも野球をやりたいといってくれていることが、唯一の救いです。野球を大好きになることが、野球が上達するうえで一番重要ですから。
それにしても子どもを試合に出さない指導者は何を指導しているのだろう、と思います。選手がいるから指導ができるのに選手に対するリスペクトがないのだと思います。私が指導者として心掛けているのは、『レッテル貼り(ラべリング)』をしないことです。
これは布施努先生(スポーツ心理学者)に教わったのですが、指導者が“この子は打てない”などとラべリングをしてしまうと、そのイメージに選手自身が引きずられて選手の可能性を狭めてしまうことにつながります。コーチングに大切なのは、選手の可能性を決めつけるのでなく、セルフイメージ(できるかもしれないという気持ち)を育てることだと教わりました。
八幡イーグルスでは極力ポジションを固定せず、複数のポジションを守ってもらっています。また、対外試合で全員が年間30打席以上、打席に立つことをミッションにしています。その結果、5年生の時45打席0安打だったのが、6年生になって打率3割、ホームラン2本を打った選手もいます。 小学生のうちは、体の大きさやメンタルを含めた成長のタイミングが大きく違うので、野球の熟練具合も変わります。皆さん同じ会費を払って参加しているわけです。試合出場の機会をなるべく平等にすることが、少年野球指導者がすべきことだと思っています」
スポーツの主役は選手
昔ながらの「昭和の野球」を続けている指導者のいるチームは入団希望者が減っているという。親同士が情報交換をすることが大きい。淘汰が進んではいるのはよいことだが、近隣によいチームがないために、野球そのものを断念する子も多い。
前出のスポーツメディカルコンプライアンス協会の中野代表理事は、「いまだにこんなことが行われるかと思うと残念でなりません。スポーツにおいては選手、子どもが主役です。指導者、大人はサポートするのです。大人が主導権を握っているのは体育、軍隊教育です。そこをくれぐれも間違わないようにしてほしい」と語る。
どんなレベルのいかなるスポーツの指導者であっても、この原則を肝に銘じるべきだろう。
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