音楽通以外も知ってほしい「黒人と歌」の苦闘史 ロック、R&B、ヒップホップの源流は黒人音楽
過酷な生活を送るために重要だった「労働歌」
いまや当たり前のように聴かれているロックやR&B、あるいはヒップホップといった音楽ジャンル。そのルーツのすべてに、「アフリカン・アメリカン」たちがかかわっています。
17世紀のアメリカ大陸ではプランテーション(大規模農園経営)が盛んで、煙草や綿花、コーヒー、サトウキビなどの生産のために大量の労働者が必要とされていました。そのため、安価な労働力として使われたのが、アフリカ大陸から強制移住させられた奴隷、すなわちアフリカン・アメリカンの祖先です。
ミシシッピやテネシー、ルイジアナ、ジョージアといった地域で、奴隷たちは、過酷な労働環境に置かれていました。つねに農園主の監視下に置かれ、規律を守っていないと鞭で打たれることが当たり前のように行われていたのです。
そのような日々で彼らが歌っていた「労働歌」は、過酷な生活を送るうえで重要な役割を果たします。歌うことで、自分自身や一緒に働く仲間たちの士気をあげるだけでなく、弾圧されることへの怒りや欲求不満を和らげることができたのです。
労働歌のジャンルの1つ「フィールド・ハラー」は、共同作業の最中に歌われるというよりは、例えば綿摘みのような1人で黙々と作業する場面などで、自分自身のために即興的に歌われたものです。集団で歌う「ワーク・ソング」よりも自由なスタイルで、語りかけるようにして歌われました。
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