ほけんの窓口、伊藤忠の出資仰いだ舞台裏 「中立」が売りの保険ショップ最大手を巡る厳しい環境
伊藤忠商事の“冒険”が生命保険業界で波紋を呼んでいる。来店型保険ショップ最大手「ほけんの窓口グループ」全株式のうち、24.2%を取得し、同社の筆頭株主に躍り出るというのだ。投資額は非公表だが、20億~30億円程度となるもよう。この結果、ほけんの窓口は、伊藤忠の持分法適用会社となる。
総合商社に限らず、金融機関などが本体を含むグループ企業向けに保険代理店(機関代理店)を傘下に持つのは、業界の慣習の一つである。ただし、一般個人向けの保険小売り(保険リテール)ビジネスに、伊藤忠のような大企業が本格参入する動きはきわめて珍しい。
伊藤忠はもともと保険分野に熱心な商社ではある。日本国内ではオリエント・コーポレーションと手を組んだ子会社が保険の販売を行っており、2013年には朝日生命と提携、保険の販売チャネル開拓や販売促進を行うビジネスにも乗り出している。保険に全くの白地というわけではないが、今回の動きは明らかに一線を画す。今後の保険流通の中核を担う「来店型保険ショップ」に、まさにど真ん中から乗りこむからだ。
「今回の株式取得を通じ、来店型保険ショップ事業に本格参入することで、業界の販売チャネルシフトを捉えたビジネスを加速する」と、伊藤忠もその意気込みを隠さない。
急成長した街中ショップ
が、業界関係者がこのニュースに反応する理由は、伊藤忠サイドのことだけではない。むしろ伊藤忠を大株主に迎えいれる、ほけんの窓口側の複雑な事情に関心を寄せている、といったほうが正確だろう。
ほけんの窓口は全国に500店舗以上を構える、来店型保険ショップ業界の最大手である。従来の生命保険は、家庭や職場に、生命保険会社専属の営業職員が通いながら売るのが主流だった。損害保険会社が生保分野に進出、傘下の代理店を通じて売るスタイルも、2000年前後から増えてはいた。しかし、この生保業界の常識を打ち壊す立て役者になったのが、ほけんの窓口だ。
街中の来店型ショップで、複数の保険会社の商品の中から、販売担当の店員が、自ら足を運んできた客に説明をしたうえで買ってもらう。この新しい形のビジネスモデルが次第に浸透。自分に合った保険商品を、一社専属でない販売員から説明を受けながら選択、購入したいという、潜在的な顧客ニーズをうまく捉えたといえる。今やショップの看板も見るのも普通になるほど、ここ数年は急成長してきた。ほけんの窓口は生保流通の革命児だった。
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