「痛いセルフブランディング」しちゃう人の盲点 「SNSでのキャラづくり」の前にやるべき本質

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人の場合も同様です。元々は抜きん出た「プログラマー」だった人が、後輩プログラマーの指導もできる「トレーナー」になり、チームを任せられる「マネージャー」になり、やがては技術視点で経営を見られる「CTO」になる、というステップアップは、自分を思い出してもらう領域を拡大していくストーリーでもあります。

同じく抜きん出たプログラマーからスタートし、「ベンチャーの旗手」「多国籍企業の経営者」「慈善活動家」「教育者」と、自分を思い出してもらう領域を拡大し続けるビル・ゲイツさんは、それゆえ自らの存在感を保ち続け、その結果として世界的な名声を保ち、そして拡大し続けてきました。

相手を決め、価値をつくり出し、それを伝える

企業が思い出してもらう場面を拡張しようとするとき、最初にするのは「誰を相手にして、どんな価値を提供するか」を決めることです。

例えば「夜マック」であれば、夕食を1人で食べる働き盛りのビジネスパーソンを相手に、落ち着いた食事と空間をカジュアルに提供すること、だと推測されます。

しかるのちに、その価値を実際に商品やサービスとして「つくり出す」必要があります。カウンターで食べる牛丼チェーンなどと違って、マクドナルドには比較的落ち着いた食事のスペースがあらかじめ用意されています。これを活用しつつ、メニュー面でも「ごはんバーガー」などを新たに開発し、カジュアルながら落ち着ける夕食のひとときを演出します。

それだけでは不十分です。つくり出した価値を、CMなどを通して提供する相手に「伝える」必要があります。ここで重要なのは、伝える価値=実態はすでに存在している、ということです。広告は、価値を「つくる」手段なのではなく、あくまで「伝える」手段なのです。

個人が思い出してもらう場面が拡張するときも同様です。自分が誰に対して、どんな価値を提供できるかを考え、それをスキルや技能として身につけることが最初のステップです。企画を考えることが得意なら、それを昇華させて企画提案のスキルを磨きます。

しかるのちに、そうして身につけたスキルを武器に、積極的に手をあげることで最初の機会をつかみ取ります。個人でコンサルなどをしているのであれば、SNSや見込み客が集まるイベントなどの場で、身につけたスキルや実績をアピールします。

SNSはそうした実態を「伝える」場にはなりえますが、「つくりあげる」場にはなりえません。SNSでただ表面的に自分の「イメージ」だけをつくりあげることは不可能ですし、仮にできたとしてもそれは砂上の楼閣で、すぐに崩れ去ってしまうでしょう。

「自らを思い出してもらう場面の拡張」は、実際に価値をつくり出し、それをしかるべき相手に伝えることでこそ実現できます。企業にせよ個人にせよ、それこそがブランドを支える「実態」なのです。

井上 大輔 マーケター、ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業推進統括 プロダクト本部 新規事業開発統括部 統括部長

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いのうえ だいすけ / Daisuke Inoue

ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディジャパンでマネージャーを歴任。ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長、ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業統括 コミュニケーション本部 メディア統括 部長を経て現職。WASEDA NEO「早稲田マーケティングカレッジ」並びに「『人生の可能性』を広げるビジネスパーソンのための本づくり講座」講師。

 

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