NYで「高級イチゴ量産工場」営む日本人の野望 創業4年で55億円を調達、目指すは世界展開
アメリカではイチゴのほとんどが西海岸のカリフォルニアで生産されている。そのため、「ニューヨークや東海岸では収穫から1週間経ったような鮮度の落ちたイチゴが売られていて、美味しくない。消費者は高くても美味しいイチゴを求めていた」(古賀CEO)。
古賀CEOは2009年に慶應義塾大学を卒業後、コンサルティングファームを経て、UCバークレーでMBAを取得。その在学中にOishii Farmを設立している。
「コンサル時代、日本のメーカーが開発した植物工場が儲からずに撤退していった事例をいくつも見た。なぜうまくいかなかったのか、この植物工場という業界で中長期的に勝つためにはどうすればよいか、徹底的に考えた」(古賀CEO)
注目度増す植物工場スタートアップ
レタスなどのように、植物工場での生産技術がすでに進んでいる作物はいくつかある。そんな中であえて難易度の高いイチゴに着目したのは、高級品として価格プレミアムを乗せることや、ブランドを育てることができるからだという。
「植物工場で作ったものかどうかに関係なく、『Oishii Farmが作っているイチゴだから美味しい』というブランド力を身に付け、植物工場業界でナンバーワンを目指す」(古賀CEO)
栽培しているイチゴは日本をルーツとする品種だ。日本国内で育成者権が切れた品種をアメリカ・農務省経由で現地に持ち込み、日本の農家出身者などとともに研究を進めてきた。もともと日本品種はアメリカ品種に比べ圧倒的に糖度が高いのに加え、研究を経て、日本で贈答用として売られている高級品と同程度の品質のものができるようになった。
アメリカではソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから総額5億ドル(約520億円)を調達しているPlenty(プレンティ)など、植物工場を開発するスタートアップが複数台頭し、近年注目を集めている。
だが、植物工場の事業を成功に導くのは決して楽ではない。先の古賀CEOのコメントの通り、撤退を余儀なくされた日本企業も複数ある。継続性のあるビジネスに育成するには、市場で売られているほかの商品との競争に勝たなければならない。味や品質に明確な差を生み出し、高くても売れるブランド力を身に付けると同時に、栽培効率を高めランニングコストを抑えることも重要になる。
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