和歌山「赤ちゃんパンダ誕生」5つの異例な事情 コロナ禍でさまざまな困難が立ちはだかった
日本で暮らすジャイアントパンダは11頭で、中国を除き世界最多だ。11頭のうち7頭がいるのは、海に面した和歌山県白浜町のテーマパーク、アドベンチャーワールド。同園では、2020年11月22日に7頭目の赤ちゃんパンダが誕生した。
公開は新型コロナウイルス禍で延期されていたが、ついに3月12日にスタート。3月18日には「楓浜(ふうひん)」の名前が発表された。同園で無事に生まれ育ったパンダとしては今回で17頭目だが、楓浜にはさまざまな「異例」がある。
コロナで中国から研究員が来られない
1つ目の異例は、楓浜は初めて日本人スタッフだけで出産に挑んだパンダだということだ。この背景にはコロナ禍によるハプニングがある。
赤ちゃんパンダは、体重が母親の約1000分の1という非常に小さな状態で生まれ、誕生後も命を落とす危険がある。こうしたことから、中国国外の動物園でパンダが生まれるときは、中国からスタッフが来て、手助けするのが一般的だ。上野動物園で2017年6月12日にシャンシャン(香香)が生まれたときも、中国からスタッフが来ていた。
アドベンチャーワールドの場合は、パンダの繁殖期になると中国から研究員が来て、交配、出産・育児それぞれの段階ごとにサポートして来た。研究員の中には、赤ちゃんパンダ専門の人もいて、生まれた赤ちゃんをケアした。
だが今回はコロナ禍のため、中国から誰も来ることができない。初めて日本人だけで出産を迎えることになった。準備として、事前のミーティングを重ね、あらゆる事態を想定。母子のパンダのぬいぐるみを使い、出産前後のシミュレーションもした。さらに、中国の研究員とは、電話やメールでつねに連携を取った。
今回の出産では、同園のパンダの飼育スタッフの吉田倫子さんが、中国・四川省の成都ジャイアントパンダ繁育研究基地で受けた研修も生かされている。吉田さんの中国での研修期間は2019年10月中旬~2020年4月中旬の予定だったが、コロナ禍のため予定を切り上げ、2020年1月下旬に帰国した。
「中国では、成獣の飼育管理として獣舎の清掃や給餌、トレーニングを学びました。赤ちゃんパンダの飼育管理としては、体温測定や排泄補助、日光浴や遊具設置などを学んでいます。生後1カ月の赤ちゃんパンダを世話させてもらったり、中国人スタッフの仕事ぶりを拝見したりしたので、(楓浜の誕生時に)とても役立ちました」(吉田さん)。
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