和歌山「赤ちゃんパンダ誕生」5つの異例な事情 コロナ禍でさまざまな困難が立ちはだかった
3つ目は、良浜の妊娠期間が163日で、アドベンチャーワールドで出産したパンダの妊娠期間として圧倒的に長かったことだ。パンダの平均的な妊娠期間は3~5カ月間とされる。
良浜が交尾したのは2020年6月11日~12日。その4カ月後の10月14日に筆者が訪れると、良浜が大量の竹をパクパク食べていた。パンダは妊娠すると食欲が落ちるが、その様子はまったく見えなかった。
ところが良浜は10月下旬から食欲が落ちたそうだ。ちなみにパンダの赤ちゃんは、一般的に体重約90~130gと、とても小さく生まれるので、母親のお腹の大きさでは、妊娠しているかわからない。
これまでに良浜が生んだ子どもと妊娠期間は、年齢が低い順に、彩浜127日、結浜113日、双子の桜浜・桃浜が136日、優浜129日、双子の海浜・陽浜が136日、双子の梅浜・永浜が138日だ。
また、良浜の母親で、2008年10月に死亡した梅梅がアドベンチャーワールドで生んだ子どもと妊娠期間は、双子の愛浜・明浜が121日、幸浜109日、双子の隆浜・秋浜が109日、雄浜93日、そして良浜が103日だった。
飼育下で世界唯一の11月生まれ
4つ目は、楓浜は晩秋の11月22日に生まれたことだ。晩秋~冬にパンダが生まれるのは、世界的にも珍しい。一般的にパンダの発情期は年1回、2~5月に訪れ、この間の2~3日間に雌の発情がピークに達して交尾が可能になる(もちろん雄との相性の悪さなどで交尾しない場合もある)。出産は6~9月が一般的だ。
実は、アドベンチャーワールドではほかにも、桜浜・桃浜が2014年12月2日、愛浜・明浜が2006年12月23日、雄浜が2001年12月17日に生まれている。楓浜を含め計6頭が晩秋~冬に生まれているのだ。アドベンチャーワールドによると、現在、11月または12月生まれの飼育下のパンダは世界で同園にしかいない。
ちなみに、マレーシアのネガラ動物園では、雌のイーイー(誼誼)が2018年1月14日に生まれている。ただ、「1月は、中国では冬で寒いですが、マレーシアでは違います」(同園のDr. Mat Naim)
アドベンチャーワールドで複数のパンダが晩秋~冬に生まれた正確な理由は明らかになっていない。「その年の気温の変化も関係していると考えています。交配が遅れるとその分、出産もずれ込みます」(アドベンチャーワールド)とのことだ。
なお、生まれたばかりの赤ちゃんパンダは、自力で体温を調節できない。そのため冬に生まれた場合、スタッフは赤ちゃんの体温が下がりすぎないように一層気を配ったそうだ。
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