人手不足の「介護業界」外国人材は定着するのか 文化や習慣などを理解し教育することが大切だ

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3つ目は、技能実習制度では、介護事業者は必要とする人員を事業協同組合や商工会などがつくる「監理団体」で確保する仕組みになっているが、この「監理団体」を自前で設立したことだ。「監理団体は、人数は確保してくれても、どのような実習生が紹介されるかわからない」ためだ。

このような事前準備以外に、技能実習生を上手に受け入れるポイントとして、天笠理事長は、よい送り出し機関を探し、そこに依頼することが最も重要と強調する。「現地の送り出し機関はたくさんあり、送り出し機関によって日本語や介護技術をどれだけ教えているかなどに大きな差がある」からだという。

そのため、天笠理事長は、ベトナムの送り出し機関を10機関以上訪れて、その中からよいと思う機関と契約し、送り出し機関が選考した技能実習希望者と面接を行うようにした。

つばさグループで技能実習生を受け入れ始めてから2年半が経つが、離職した人はいない。技能実習生が働きながら学び続けられるようにするために、天笠理事長が最も重視しているのは、「自分の子どものように面倒をみる」ことだという。

住まいもしっかりサポート

「住まいも変なところに住まわせたくないという気持ちがあり、グループでは不動産業も行っているので、日本人でも住みたくなるような立派な住宅に住んでもらっている」(天笠理事長)

「自分の子どものように面倒をみる」という言葉の中には、技能実習生の将来の夢を叶えるということも含まれている。現在15人いる技能実習生の将来の希望は、技能実習が終了すれば母国に帰りたいという人と日本で働き続けたいという人が約半々。

母国に帰りたいという人の中には、介護施設で働きたいという人のほか、日本語の先生になりたいという人もいる。一方、日本で働き続けたいという人の中には、「特定技能」に変更して日本で働き続けたいという人や、介護福祉士資格を取得して日本で永続就労したいという人もいる。これらの希望に対し、天笠理事長は、「希望が叶うように応援するから一緒に頑張ろう」と実習生を激励しているという。

具体的な準備もすでに進めている。例えば、つばさグループでは、ベトナムに進出して介護施設を運営する計画を立てており、第1号施設の建設着工が今年5~6月頃に始まる。

「ベトナムに進出するということは、人材も育てなければいけない。うちで勉強した人たちが将来、ベトナムに帰ってうちの施設で働いてくれることは、当方にとってもとても喜ばしいこと」(天笠理事長)。ベトナム進出のことは本人たちにも話しており、ベトナムに帰りたいという人の中にはつばさグループの施設で働きたいという人も多いとのことだ。

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