「ブラック・ライブズ・マター」(BLM )の活動のように「アジア人の命を尊重してほしい」という全国的なデモ活動は必要だと思うか、とカワイ氏に聞くと、「警察に根深く差別されてきた歴史がある黒人たちと、われわれアジア系の問題は少し違うと思う。個人的には、BLMの手法ではなく、地域と国政の政治家を動かして法規制を強化する方向で対処したほうが効果的だと思う」と語った。
東本願寺の伊東さんは、過去に同寺院のウェブサイト上でBLM支持連帯のメッセージを示してきた。黒人のジョージ・フロイド氏が警官によって殺された事件を受け、「いかなる人種差別にも反対する」という宣言を署名入りで記している。そのメッセージの中で、同寺も歴史の中で人種差別の波をたびたび受けてきたことが記されている。
伊東さんいわく、第2次世界大戦中に、東本願寺ロサンゼルス別院の僧侶は「日本とのつながりが深い存在」とスパイ扱いされ、強制収容所に入れられたという。ただ、今回の放火・破壊事件を受け、伊東さんは「この状況で人々の和を作り出すには、いったいどうすればいいかをいちばんに考えています」と語る。
日系人の間でも意見が分かれている
同寺の会員たちの中でも「アクションの起こし方」への意見は分かれているようだ、と伊東さんは語る。
戦時中の強制収容所体験を経ている日系アメリカ人2世たちの間では、「ヘイト(憎悪)を声高に語れば、より日系人へのヘイトをかきたてる可能性が高いからデモはむしろ逆効果」と考える人も多数いるが、日系3世や4世の世代では「我慢していても差別は酷くなるだけ。街に出てアジア系の人権のためにデモをしよう」という意見も一般的だという。
「どちらがいいのか、正直、私にはわかりません。悟りを開く境地にはほど遠いです。人権の啓蒙活動をいかに効果的にやればいいのか。私個人としては、人と人をつなぐ融和的なメッセージを伝えていきたいです」と伊東さんは語る。
3月11日、ついにバイデン大統領が国民へのテレビメッセージを通し「アジア系アメリカ人がコロナ禍のスケープゴートとして酷い暴力や嫌がらせを受けている。彼らは道を歩くのすら恐怖を感じている。暴力を今すぐやめるように」と宣言を出した。
アジア系人権団体「Stop AAPI HATE」によれば、コロナ禍の1年間で、全米で約3000件のヘイトクライムが報告されており、その半数がカリフォルニア州で起き、高齢者や女性が標的になっているケースが多いという。犠牲者の属性もさまざまだ。中国系、日系、韓国系、タイ系、フィリピン系、ベトナム系などほとんどすべてのアジア系が襲われている。
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