アメリカで苛烈化する「アジア人ヘイト」の実態 東本願寺別院の放火で見えたロサンゼルスの今

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日系アメリカ人の人権団体「ジャパーニーズ・アメリカン・シチズンズ・リーグ」(JACL)のサウスベイ支部代表のケント・カワイ氏は、サンフランシスコやニューヨークでのアジア系に対する襲撃事件と、今回の事件はすべてつながっていると見ている。

「コロナ禍で職を失い、その怒りやフラストレーションのはけ口として、アジア系が狙われている可能性も高い。前政権が『チャイナ・ウイルス』と連呼し、人々の潜在意識に『アジア系のせいでこうなった』という意識がいつしか芽生え、いかにも伝統的な日本の仏教の寺の建築を見かけて『アジアの建物だ、壊してしまえ』となったのかもしれない」と言う。

高齢者が被害にあいやすい懸念

東本願寺の横の歩道に立っていると、ひっきりなしにアジア系のおじいさんやおばあさんとすれ違う。東本願寺のすぐ隣に、日系や韓国系住民のシニアたちが住む「リトル東京タワーズ」という高齢者専用アパートがあるためだ。現在このアパートには300世帯が入居中で、全員が高齢者だ。彼らは車の運転をせず、近くのスーパーなどに徒歩で買い物に行く。

東本願寺の横の歩道を歩く買い物帰りのアジア系のシニア(写真:筆者撮影)

身体が小さく、小さな歩幅で歩くアジア系の高齢者たち。帰りは食料品を入れた小型カートを引きながら、さらにゆっくりしたペースで歩道を歩いて行く。そんな彼らは憎悪犯罪の格好のターゲットになってしまいそうだ。買い物に車が必要なく、徒歩で暮らせるリトル東京は、本来ならシニアには好都合な構造の街のはずなのに、それが裏目に出る可能性がある。

リトル東京タワーズの組織運営委員の1人でもある、前述のカワイ氏がいちばん心配するのもその点だ。

「入居者たちはセキュリティカードを持っており、そのカードがなければアパートの中に出入りできない構造だが、お年寄りたちに外に食料品の買い出しに行くなとは言えない。24時間体制で警備する人員や、周囲のパトロールを増強するなど、早急に役員会を開いて対策を立てるつもりだ」と語る。

サンフランシスコでは今年1月にタイ人の84歳の男性が散歩中に男性に体当たりされ、いきなり道に叩きつけられ脳挫傷で死亡した事件が起きたばかりだ。

アジア系やアジア人の住民たちは、嫌がらせや暴力を受けても英語が不自由なため、警察に届けないケースも多い。そんな中、白昼堂々起きるヘイトクライムから、身の安全をどうやって守ればいいのか。アジア系住民の間では、恐怖と不安が日々高まっている。

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