アメリカで苛烈化する「アジア人ヘイト」の実態 東本願寺別院の放火で見えたロサンゼルスの今

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そしてその数ブロック先には5000人以上のホームレスが住む、全米最大規模のホームレス居住区「スキッド・ロウ」がある。ここは、ドラッグ依存やメンタルヘルスの問題が深刻化しており、コロナ禍前から治安は極めて悪い。車に乗っていても、すさまじい数のホームレスがいるスキッド・ロウを通り抜けるのはほぼ命がけ、というほど怖い。

収容しきれなくなったホームレスが「移住」

「リトル東京交番」でボランティアをしている大石剛司氏によれば、コロナ禍により、スキッド・ロウ地区で収容しきれなくなったホームレスたちが、リトル東京のすぐ脇のトリウミ・プラザに移動してきており、道端を掃除すると、注射器がいくつか落ちているのを発見することもあるという。

「ロス市警の警官たちも、時々うちの交番に立ち寄るんだけど、ホームレスが店先などに住み着いて困ると住民から苦情を受けても、警察としては取り締まることはできないし、お手上げだと言っていた」

「交番」のすぐ近くのトリウミ・プラザ広場に行ってみると、ざっと20個以上のビニールテントがあちこちにあり、ミニ・スキッド・ロウ的な、新たなホームレス村が形成されていた。

リトル東京に隣接するトリウミ・プラザにはホームレスのひとびとのテントが20ほどある(写真:筆者撮影)

月曜日の朝に行くと、市が移動簡易シャワーなどのサービスをホームレスの人々に提供していた。ゴミの収集も週一のペースであるという。「通行人や客に迷惑をかけない限り、コロナ禍の現時点では、ホームレスの存在が街中で容認されている状態」と大石氏は言う。

ロサンゼルスの失業率は現在11%。コロナ禍のこの1年間で多数の人が職を失い、新規のホームレス人口も爆発的に増えている。

東本願寺のすぐ横に住むホームレスの男性(写真:筆者撮影)

東本願寺の伊東さんによると、同寺院の会員たちは、フードバンクなどでホームレス支援を続けてきた。リトル東京の街自体が、日常的にホームレスと共存していかなければならない現状のコロナ禍だが、ホームレスの人たちの間での薬物依存が深刻なため「デリケートなバランスを保ちつつ、支援の仕方には十分気をつけています」と伊東さんは話す。

そんな中、今回の東本願寺の放火・破壊の犯行の一部始終を、寺の周囲にいたホームレスの人々が目撃していたことが判明。ロス市警は、寺の付近に住むホームレスにすでに聞き込みをしたことを伊東さんに伝えた。「ホームレスの人たちも、ある意味、お寺を見守っていてくれたのかもしれません」。

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