トヨタ「学校推薦廃止」が象徴する制度の形骸化 理系の"特権"、6割の学生は「なくても困らない」

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2019年のトヨタ自動車の入社式の様子。同社技術系新卒採用で学校推薦を廃止する予定だ (編集部撮影)

2020年11月20日に「トヨタ、技術系新卒採用で学校推薦廃止」という記事が日本経済新聞に掲載された。他紙も大きく取り上げ、なかには一面に掲載する新聞もあった。続いて「大学推薦を撤廃したトヨタの狙いは?」などの解説記事も目にした。

各紙の内容はほぼ同じ。「自動車に限らず大手メーカーは、技術的な基礎を学んできた理系の学生を採用するため学校推薦を重視することが多い」、「自動車や電機、化学などの大手製造業では、理系の新卒者を大学、研究室の推薦に基づいて採用するのが一般的だ」、「大手メーカー(製造業)に入る理系学生は推薦制度での採用が多いのが現状」と論旨は似通っている。

理系の推薦制度が、トヨタの推薦枠廃止を契機に変わるかもしれないという見立てだ。しかし、見立ての前提が間違っているように思える。すでに推薦制度は形骸化しているからだ。データで実態を紹介しよう。

利用する学生はもはや少数派

使用するのは、HR総研と理系院生向け就活サービス『LabBase』を運営する株式会社POLが2021年1月に実施した共同調査の中から、「トヨタ自動車が推薦枠を廃止したことに関連して、今後、この動きが広がったらどう思うか」の回答データである。

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理系推薦制度の利用実態から確認してみたい。「あなたは就職活動で推薦応募を行いますか」という設問に対し、「推薦応募する予定」は22.1%とかなり少ない。「推薦応募しない予定」は46.1%と半数近くを占め、「決めかねている」は31.8%と3分1近くある。

次に、「トヨタ自動車以外の企業でも推薦枠の廃止への動きが進むとしたら、どのように思いますか」との設問に対して、「非常に困る」は10.4%と1割にとどまり、「やや困る」は28.9%と3割近いが、「あまり困らない」は31.6%、「全く困らない」が29.1%だ。つまり6割の学生は推薦にあまり関心がなく、推薦制度に強い期待を寄せているのは少数派である。

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