トヨタ「学校推薦廃止」が象徴する制度の形骸化 理系の"特権"、6割の学生は「なくても困らない」

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推薦がなくなると困るとする学生は推薦の効能を認め、内定へのショートカットと考えている。しかし、効能を評価せず、「困らない」とする学生のほうが多い。困らない学生は推薦に対し素っ気ない。例えば、「利用するつもりがない」「考えてない」「推薦枠を考慮しない」「実力でいけばいい」とゴーイング・マイウェイ、独立自尊である。

「あまり困らない」という学生のコメントをいくつか拾い出してみよう。学生たちの気概が頼もしい。

「推薦応募に魅力を見出せない」(愛知工業大学大学院・電気・電子)

「能力に自信があるため」(横浜国立大学大学院・機械)

「実力で内定先が決まるほうが公平であると思う」(横浜市立大学大学院・生物・農)

「学校推薦をあてにしておらず、受けたい企業は自由応募で選考に参加する」(京都大学大学院・物理・数学)

「推薦であっても、ESや面接が必要であり、通常の選考と変わらない」(東京工業大学大学院・その他)

「そもそも推薦枠がない」

「全く困らない」という学生のコメントは「あまり困らない」とよく似ており、「同じスタートラインで自分の能力を試せるから」(熊本大学大学院・薬学)、「そんなものに頼らなくても自力で内定はとれる」(上智大学大学院・物理・数学)と自信に満ちている。

ただ、「そもそも推薦枠がない」という学生も多い。専攻を見ると「生物・農」「情報」「物理・数学」「その他」が目立つ。これらの系統は製造業との関係が薄いことが特徴だ。また、AIやビッグデータはとても新しい分野なので、推薦がないのだと思う。

「私の専門はもともと推薦がない分野だから」(京都大学大学院・その他)

「研究室や研究科の規模が小さく、推薦が見込めない」(広島大学大学院・その他)

「研究職希望や高度専門職志望でないため、そもそも企業推薦がほとんどなく関係がない。推薦制度の意義に疑問があるので廃止はむしろ望ましいと感じる」(早稲田大学大学院・情報)

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