しかしその時代になっても、MLBから一線級の選手がNPBに移籍することはほとんどなかった。この時期には日米のプロ野球には大きな「経済格差」が生じていたからだ。
1984年のロサンゼルス五輪を空前の成功に導いた組織委員長のピーター・ユベロスがMLBのコミッショナーになってからMLBの経営は革命的に変わった。MLB機構は放映権、フランチャイズ、ライセンスなどの事業を強力に推進、ネットによるチケットやグッズ販売、動画配信なども世界レベルで展開、さらにエクスパンションで球団数も増やしたこともあり市場、経済規模は急拡大した。
2000年時点でNPBの最高年俸はイチローの5.3億円、この年のMLBの最高年俸はドジャース、ケビン・ブラウンの1571万ドル。当時のレートで17.3億万円、その差は約3.3倍だった。しかし2019年ではNPBの最高年俸は菅野智之の6.5億円に対しMLBはナショナルズのスティーブン・ストラスバーグが3833万ドル、約40億円。その差は6倍に広がった。
エクスパンションによって選手数が増えたこともあり、一線級のメジャーリーガーがNPBに来ることはなかった。
変化した外国人選手の見極め方
とはいえ、NPBは世界のプロ野球ではMLBに次いで経済規模が大きく、MLBをFAになったベテラン選手にとっては最高の“再就職先”ではあった。MLBでそれなりの実績を積んだベテランは、FAになると代理人を通じて日本の球団に売り込むようになった。
しかしながら、NPB側も外国人選手との長い付き合いの中で、実力格差だけでなく「向き不向き」があることも学習してきた。
NPBの多くの球団は、MLBで実績を挙げたベテランではなく、MLBでの出世をあきらめた若手選手やマイナーで実績を残した選手を中心に適性を見極めるようになった。
昨年のNPBでもパ・リーグの最多ホールドを獲得したソフトバンクのリバン・モイネロはキューバ国内リーグ出身、セ・リーグ最多セーブの阪神のロベルト・スアレスはマイナーリーガー。ともにMLBでのプレー経験はなかった。
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