ところが新型コロナウイルス禍は、MLBの独り勝ち状態だったこの状況を大きく変えた。世界最大の感染者数、死者数のアメリカでは、2020年のレギュラーシーズンは例年の4割以下の60試合に短縮された。しかも無観客。MLB球団は大幅な赤字となり、選手会との協議を経て年俸が大幅に削減された。
MLBは「5月開幕、154試合制」でMLB選手会と交渉したが妥結せず、「4月1日開幕、162試合制」でペナントレースをすると発表した。オープン戦の観客動員は2000人前後で行われているが、公式戦の観客動員数の上限はまだ発表されていない。またFAになった大物選手も移籍先が決まらないケースが頻出した。
この状況下、MLB球団は、将来を見越して若くポテンシャルが高い選手と大型契約を結ぶ一方で、一線級であっても30代に差しかかって将来の伸びしろが見込めない選手との契約を後回しにするようになった。
ヤンキースで7年連続2桁勝利を挙げた田中将大もその一人で、田中は楽天への復帰を決めた。また「韓国のイチロー」と呼ばれMLBで1671安打を打っている秋信守もKBO(韓国プロ野球)への移籍を決めた。
一線級の選手が日本でプレーする可能性
またMLBはマイナーリーグのリストラを進め、160球団あったマイナーリーグチームを120球団にまで絞り込んだ。マイナーリーガーの競争は激しくなり、ベテランメジャーリーガーの座はさらに危うくなっている。
MLBの今後の展望が見通せない中で、これまでNPBには見向きもしなかった一線級の選手が、プレーの機会と“そこそこの年俸”を求めてやってくる可能性は高まっている。NPBでは見ることができない恐るべき変化をするボールを投げる投手や、ずば抜けたスイングをする打者がやってくる可能性が高まっているのだ。
今世紀以降のMLBが、ビジネス面でも競技の面でも劇的に進化する中で、NPBは2004年の球界再編以降は緩やかな進化にとどまっていた。筆者は、NPBは「昭和の御代」の残滓を引きずり、アメリカの新たなトレンドに背を向けて、ぬるま湯的なマネジメントに終始しているという印象を持っている。
新型コロナ禍を契機として、MLB球団と契約できなかった実力派の大物選手がやってくる可能性は高まると思う。一線級の超大物外国人選手の来訪は、競技面でNPBの「泰平の眠りを覚ます黒船」になるのではないか。
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